
ヨーロッパと一口に言っても、じつはその気候は国や地域によってまったく違うって知ってましたか?パリでは雨がしとしと降っているのに、ローマでは真っ青な空が広がっていたり、ストックホルムでは凍える寒さの中で、アテネは日差しで汗ばむ──そんな光景が一度に起こり得るのがヨーロッパの面白さ。このページでは、そんなヨーロッパ各地の気候の違いを「なぜそんな地域差が生まれるのか?」という視点とともに、地域別にわかりやすく整理していきます。
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ヨーロッパでこれほど多様な気候が見られるのには、いくつかの“地理的なカラクリ”があります。
西側は大西洋に近く、北大西洋海流や偏西風の影響で気温が比較的穏やか。一方、東に行くほど海から遠ざかり、大陸性気候の影響が強くなります。
アルプス山脈やピレネー山脈など、ヨーロッパには大きな山の壁がいくつも存在。これらが湿った空気や暖気・寒気の移動をさえぎり、地域ごとの気候をガラリと変えてしまうんです。
南北に長いヨーロッパでは、北に行くほど太陽の高さが低くなり、寒さが増すのもポイント。スカンジナビア半島のような高緯度地域では、夏と冬の長さ自体がまったく違うのです。
ヨーロッパの気候分布図
西のCfb(西岸海洋性:緑)、南のCsa・Csb(地中海性:黄緑)、東のDfa・Dfb(大陸性:紫)、北や山岳地帯のDfc・Dfd(亜寒帯性:ピンク)が帯状に広がっている
出典:Photo by LordToran / Wikimedia Commons CC BY-SA 3.0より
ここからは、ヨーロッパを「東欧・西欧・中欧・南欧・北欧」の5地域に分けて、それぞれの気候的な特徴を見ていきましょう。
ポーランド、ウクライナ、ルーマニアなどを含むこのエリアは、大陸性気候が支配的。夏は暑く、冬は非常に寒いというメリハリのある気候です。降水量は年によって変動が大きく、冬は雪に覆われる日も多め。気温の上下幅が激しいのが特徴です。
フランス、イギリス、オランダなどの地域は西岸海洋性気候に属し、年間を通して温暖で雨が多いのが特徴。海と偏西風の影響で寒暖差が小さく、冬でも氷点下になる日は少ないです。霧やしとしと雨が多く、どんよりした空が多い季節も。
ドイツ、オーストリア、チェコなどが属する地域は、海と内陸の中間的な気候。夏は30℃を超える日もある一方で、冬は雪が積もるほど寒いこともあります。気温・湿度ともに季節によって変動が大きく、「四季のはっきりしたヨーロッパ版日本」といった感じです。
スペイン、イタリア、ギリシャなどは地中海性気候に属し、夏はカラッと暑く、冬は温暖。降水量は少なめで、特に夏はほとんど雨が降らず乾燥気味。その代わり、冬にまとまった雨が降る「冬雨型」の気候が特徴です。
ノルウェー、スウェーデン、フィンランドなどは亜寒帯気候や寒帯気候に属する地域も多く、冬の寒さと雪の量が桁違い。一方で、夏は日照時間が長く、フィンランドでは「白夜」が見られることもあります。沿岸部は比較的温暖で、内陸に行くほど厳しい冷え込みが特徴です。
ヨーロッパの国々の中には、本土から遠く離れた場所に海外領土を持っている国がいくつもあります。そして当然ながら、それらの地域の気候は本土とはまったく異なるもの。ここでは、代表的な5か国の海外領土とその気候を簡単に見ていきましょう。
フランスは地球上のすべての大陸に海外領土を持つ珍しい国で、気候のバリエーションも圧倒的。マルティニーク島やグアドループといったカリブ海の島々は熱帯雨林気候に属し、高温多湿。フランス領ギアナ(南米)も年中蒸し暑く、まさに“熱帯のフランス”といった趣です。
イギリスの代表的な海外領土といえばジブラルタル(スペイン南端)やフォークランド諸島(南大西洋)、バミューダ諸島など。これらの地域では地中海性気候・海洋性気候・冷涼な亜熱帯性など、バラバラな気候が見られます。ちなみにバミューダはゴルフリゾートで有名な高温多湿の亜熱帯性気候です。
オランダも意外とカリブ海に海外領土を持っています。たとえばアルバ島・キュラソー島・ボネール島などがそれにあたり、これらは乾燥したステップ気候〜サバナ気候に近い環境。年中温暖で、雨季と乾季がはっきり分かれているのが特徴です。
デンマークが支配するグリーンランドは、ヨーロッパ随一の寒冷地。ほとんどがツンドラ気候または氷雪気候に分類され、夏でも平均気温が10℃以下という厳しい環境です。一方、北極圏に近いため、夏には白夜も見られるのが大きな特徴です。
スペインはカナリア諸島をはじめとするアフリカ沖の島々を持っています。これらの島は温暖で乾燥したステップ気候や地中海性気候で、一年中リゾート向きの気候として有名。またセウタやメリリャといったアフリカ北岸の飛び地も、地中海性気候の範疇にあります。
このように、ヨーロッパ本土の気候は地域によって大きく異なるだけでなく、海外領土を含めればまさに「世界中の気候を抱える大陸」と言っても過言ではないのです。国ごとに異なる“もうひとつの顔”にも注目してみると、ヨーロッパの気候はますます奥深く感じられますね。
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