



ノートルダム大聖堂(パリ)
大聖堂は礼拝と共同体の中心として、都市の顔にもなっている。
ヨーロッパで主流のキリスト教を象徴する建築物といえる。
出典:『Paris, Notre Dame -- 2014 -- 1434』-Photo by Dietmar Rabich/Wikimedia Commons CC BY-SA 4.0
ヨーロッパの宗教事情は、その土地が歩んできた歴史と文化に、しっかり根を張っています。
まず大前提として押さえておきたいのが、ヨーロッパで最も広く信仰されてきた宗教がキリスト教だという点です。
大きな転機となったのは、ローマ帝国がキリスト教を国教として採用したこと。
この出来事をきっかけに、キリスト教の教えは帝国全域へと広がり、政治や社会の枠組みと結びつきながら、ヨーロッパ世界の基盤を形づくっていきました。
その後の中世においても、キリスト教は単なる信仰にとどまりません。
教育、文化、政治──社会の中心には常に教会があり、多くの国で国教として位置づけられていきます。
「生き方」そのものが宗教と結びついていた時代、と言ってもいいでしょう。
一方で、現代のヨーロッパはそれだけでは語れません。
近年は移民の流入により、イスラム教、ユダヤ教、仏教、ヒンドゥー教など、さまざまな宗教を信仰する人々が増えています。
宗教的な景色は、確実に多様になってきているんですね。
キリスト教が圧倒的多数を占める一方で、ヨーロッパは今、多宗教と共存する社会へと姿を変えつつある──ここが、いまのヨーロッパを理解するうえでの重要なポイントです。
このあとでは、ヨーロッパで信仰されている各種宗教の事情と全体に占める割合、そしてなぜキリスト教がこれほど強い影響力を持つに至ったのか。
その歴史的背景を、できるだけ噛み砕いて見ていきましょう。

多宗教祈祷室の案内標識(ロンドン・ヒースロー空港)
移民社会で多宗教が共存する故に、公共空間での「多宗教対応」が必要になった状況を示す。
出典:『Multi-faith prayer room sign at London Heathrow Airport』-Photo by Jyri Engestrom/Wikimedia Commons CC BY 2.0
ヨーロッパというと「キリスト教の世界」というイメージが強いですよね。
たしかにそれは間違いではないのですが、実際の姿はもう少し複雑です。
長い歴史の中で宗教は社会の中心にあり続けましたが、近年は世俗化が進み、信仰のあり方も大きく変わってきました。
ここでは、現在のヨーロッパ全体を俯瞰しながら、主な宗教とその割合を見ていきましょう。
ヨーロッパで最も信者数が多いのは、今も昔もキリスト教です。
人口全体のおよそ約66〜67%がキリスト教徒とされています。
カトリック、プロテスタント、正教会といった宗派の違いはありますが、
法律、祝祭日、価値観の土台には、今もキリスト教的な考え方が色濃く残っています。
ただし、かつてのような「生活の中心としての信仰」からは、少し距離を取る人が増えているのも事実です。
イスラム教徒は、ヨーロッパ全体で見ると約6%前後とされています。
主に移民やその子孫を中心に信仰されており、西欧の大都市部では存在感がはっきり見えるようになりました。
日常生活の中で宗教的慣習を守る人も多く、
食文化や服装、礼拝のあり方などを通じて、ヨーロッパ社会に新しい多様性をもたらしています。
人口比では1%未満と非常に少数ですが、ユダヤ教はヨーロッパ史において特別な存在です。
中世以来、迫害と共存を繰り返してきた歴史を持ち、思想や経済、文化の面で大きな影響を残してきました。
現在はフランスやドイツなどに比較的大きなコミュニティがあり、
宗教というより「歴史と文化のアイデンティティ」として位置づけられる場合もあります。
仏教もまた、人口比ではごく少数にとどまります。
アジア系移民による信仰が中心ですが、近年では瞑想や思想面に関心を持つヨーロッパ出身者も増えています。
宗教というより、哲学やライフスタイルの一部として受け取られることが多い点が特徴です。
そして見逃せないのが無宗教の人々。
現在では約25%前後が、特定の宗教に属さないとされています。
とくに北欧や旧共産圏、若年層を中心にこの傾向は顕著です。
「信仰を持たない」ことが特別ではなく、ごく自然な選択肢として受け入れられている──これも現代ヨーロッパの大きな特徴です。
ヨーロッパは、宗教の伝統を土台にしながらも、多様化と世俗化が同時に進む社会へと変化している、そう言えるでしょう。
ヨーロッパの宗教事情を観察していると、キリスト教を中心とした長い歴史と、現代の多様化・世俗化が同時に存在していることがわかります。
ローマ帝国の国教化と中世社会を通じて、キリスト教は社会制度や文化の土台として深く根づいてきました。一方で近年は、移民の増加や価値観の変化によって、イスラム教や他宗教、そして無宗教の人々も確実に増えています。
伝統としての宗教と、多様化する現代社会が重なり合っている点こそが、現在のヨーロッパ宗教事情の特徴と言えるでしょう。
情報ソース:

ローマ帝国の国教化を進めたテオドシウス1世(347 - 395)の肖像
380年の「テサロニキ勅令」以降、国家が正統信仰を定める流れが強まり、ヨーロッパにキリスト教が広がる土台になった。
出典:『Theod1』-Photo by Rasiel/Wikimedia Commons CC BY-SA 3.0
ヨーロッパでキリスト教が圧倒的に多いのは、単に「昔から信仰されてきたから」という一言では片づけられません。
そこには、国家の選択、社会の仕組み、そして人々の暮らしに深く入り込んだ歴史の積み重ねがあります。
ここでは、その理由を三つの視点から見ていきましょう。
最初の大きな分かれ道が、ローマ帝国によるキリスト教の国教化です。
皇帝と国家が正式にキリスト教を支持したことで、信仰は個人の問題ではなく、社会全体を貫く共通ルールになりました。
道路や都市網と同じように、宗教も帝国の広がりとともにヨーロッパ全域へ浸透していったわけです。
ローマ帝国崩壊後も、キリスト教の影響力は弱まりませんでした。
むしろ中世に入ると、教会は教育、医療、文化、政治の中心的な存在になります。
生まれ、学び、結婚し、死を迎えるまで──人生の節目すべてに宗教が関わる社会。
こうしてキリスト教は「信じるもの」というより、「当たり前の前提」になっていきました。
もうひとつ重要なのが、王や国家とキリスト教の関係です。
多くの国で、王は神に選ばれた存在とされ、統治の正当性が宗教によって裏付けられました。
国教としてキリスト教が定着した背景には、政治と信仰が互いを支え合う構造があったのです。
キリスト教は、信仰として広まっただけでなく、国家・社会・生活の仕組みそのものに組み込まれていった──ここが決定的なポイントです。
ヨーロッパにキリスト教が多い理由は、ローマ帝国の国教化、中世社会への深い浸透、そして王権との結びつきにあります。長い時間をかけて社会の基盤となったことで、キリスト教は現在もヨーロッパの文化と価値観の根底を支え続けているのです。
以上、ヨーロッパにおける宗教の種類やその割合、そしてなぜキリスト教が多いのかという理由について見てきました。
少し視界が開けた、そんな感覚はありましたでしょうか。
ヨーロッパの歴史をたどっていくと、宗教は常に社会の奥深くに存在しています。
政治の形、教育のあり方、祝祭や価値観──どれを取っても、宗教と無関係ではいられませんでした。
ヨーロッパを理解するうえで、宗教は「背景」ではなく「土台」そのもの、と言ってもいいでしょう。
今のヨーロッパは、多様な宗教や無宗教が共存する社会へと変化しています。
それでも、キリスト教を軸に積み重ねられてきた歴史と文化が、今なお社会の深いところで息づいている──
そこを意識すると、ヨーロッパの姿がぐっと立体的に見えてきますね。
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