海の民

海の民

海の民は、ヨーロッパ最古の文明・エーゲ文明崩壊の要因の一つと考えられている海上民族です。ヨーロッパは前1200年頃、「前1200年のカタストロフ」といわれる大規模な社会変動(異民族の流入や気候変動、疫病の蔓延など)に見舞われますが、海の民の台頭はその社会変動の主要な部分を成し、ギリシア世界を400年の暗黒時代に導きました。

 

「海の民」の由来

『海の民』という呼称は近代になって定着したもので、エジプトの文書に記されていた呼称を「Sea peaple」と直訳したものに由来しています。その名の通り、船を巧みに操り、東地中海広くに幅を利かせていた海洋民族で、様々な民族で構成された連合体であったと考えられています。

 

「海の民」の歴史

「海の民」と戦う古代エジプトの軍の様子。「デルタの戦い」として知られ、ファラオ葬祭殿の壁に彫られたもの。(Wikipediaより引用)

 

「海の民」は、小アジアやエーゲ海諸島を拠点に、前13世紀から前12世紀にかけ東地中海諸国を激しく攻撃し、前12世紀にはギリシアのミケーネ文明も滅ぼしています。また当時製鉄技術を独占していたヒッタイトを滅ぼしたのも彼らといわれ、ヒッタイトの滅亡により、彼らの独占していた製鉄技術が世界に拡散し、鉄器時代が始まったことを考えると、世界史にも重大な影響を与えた民族といえるでしょう。なお海の民が侵略を始めた動機としては諸説ありますが、食糧不足で新たな新天地を求めたため、ともいわれています。