アイスランドの歴史年表

アイスランドの国旗

 

アイスランドの国土

 

アイスランド(正式名称アイスランド共和国)は北ヨーロッパにあり、スカンディナヴィア半島の西・北大西洋上に位置する共和制国家です。アイスランド島と周辺の島々で構成された島国で、北部は北極圏に接しています。首都は「煙たなびく湾」の別名を持つレイキャビク

 

この国は火山と氷河という異質なものが並存する「火と氷の国」として有名で、それら利用した地熱発電・水力発電などエネルギー産業がさかんです。また島国らしく漁業は古くから基幹産業の一つですが、近年は豊富なエネルギー資源を活かした工業主体にシフトしつつあります。

 

中世初期に北欧からアイスランド島に移住してきたノルマン人バイキングがアイスランド人の祖先で、島内には複数のノルマン人部族が並立しますが、やがて「世界最古の近代議会」といわれるアルシングにより民主的統制をとるようになります。まもなくノルウェーデンマークによる植民地支配により長い間政治的独立を奪われますが、20世紀半ばにようやく独立を取り戻し現在に至っています。

 

地理的な要因から大陸ヨーロッパ諸国の同化圧力が少なかったため、中世から続く伝統文化の多くが保持されています。独立国家としての歴史はまだ浅いかもしれませんが、言語を始めアイデンティティの根っこの部分はほとんど姿を変えず脈々と受け継がれおり、アイスランド語が古典文学を読み解くのに重宝されるなど、アイスランド文化の史学的価値は非常に高いです。ここではそんな歴史あるアイスランドの古代から現在までの出来事を年表形式でまとめています。

 

 

 

古代アイスランド

前4世紀頃

古代ギリシア人の探検家ピュテアスが、アイスランドの島と考えられる「トゥーレ」を発見

 

中世アイスランド

アイスランドの本格的な歴史の歩みは中世から始まります。9世紀後半にノルウェー・バイキング(インゴゥルブル・アルトナルソン)が当時まだ無人だったこの場所に移住したことがアイスランド人の起源とされています。アイスランド人は10世紀には世界最古の議会とも呼ばれる全島民会(アルシング)により憲法を制定し、当時にしては珍しい共和制の連邦国家を形成しました。しかし13世紀以降はノルウェーの支配下に、14世紀末以降はデンマークがノルウェーを併合したことでデンマークの支配下におかれ、植民地国として長い長い時を過ごすこととなります。

 

9世紀

ノルウェー人バイキングがアイスランドへの植民を開始。930年までにおよそ2万人が移住

 

10世紀

930年 アルシングの創設

世界最古の近代議会とされる統治機関「アルシング」が、アイスランドに創設される

 

985年 グリーンランドの発見

アイスランド・バイキングのエイリーク・ソルヴァルズソン(赤毛のエイリーク)が、グリーンランドを発見

 

992年 アイスランド人が北米に到達

「赤毛のエイリーク」の息子でバイキングのレイフ・エリクソンが北米に渡る。アメリカに上陸した初のヨーロッパ人となった。

 

1000年 キリスト教の国教化

アイルランドではもともと北欧神話の神々を崇拝する多神教が根付いていたが、9世紀頃からノルウェーの圧力もありキリスト教への改宗が始まった。言い伝えによれば1000年に正式にキリスト教が国教となったとされる。

 

 

 

13世紀

1241年 スノッリ・ストゥルルソンの暗殺

アイスランドの統治者スノッリ・ストゥルルソンが、アイスランドを支配下におこうとするノルウェー王の刺客に暗殺される。

 

1262年 ノルウェーによる支配

ノルウェーに征服され、アルシングも事実上機能を停止した。

 

14世紀

1380年頃 デンマークによる支配

ノルウェーの衰退にともない、アイスランドの支配権がデンマークに移る。

 

近世アイスランド

15世紀

1402年 ペストの流行

アイスランド島で別名「黒死病」とも呼ばれるペストの流行が始まる。1404年までに全島民の3分の2が死亡した。

 

16世紀

1550年 プロテスタントへ改宗

デンマークからの圧力により国教をルター派(プロテスタント)に改宗する。

 

18世紀

1783年 ラキ火山の噴火

アイスランド南部のラキ火山が噴火。噴火後大飢饉が発生し、住民の2割が死亡。大量の家畜も死亡し、島に壊滅的な被害をもたらした。

 

1800年 アルシングの禁止

デンマーク政府に独立派を抑え込む目的でアルシングが禁止される。

 

近代アイスランド

アイスランドで長い植民地支配に異議を唱える独立運動が活発に行なわれるようになったのは19世紀中期からです。20世紀初頭に内政に関わる自治権を獲得し、デンマークと「同君連合」の枠内で独立王国として認められるなど、失った権利を段々と取り戻していきます。そして第二次世界大戦が勃発し、宗主権を持つデンマークがナチス・ドイツに占領されたのを機に、デンマークからの完全独立を宣言。アイスランド共和国として正式に独立を達成したのです。

 

 

 

19世紀

1847年 アルシングの復活

19世紀以降の独立派の熱心な活動の結果、アルシングが復活した。

 

1854年 交易の自由化

1602年以降、デンマークに独占されていた外国との通商交易が完全自由化となる。

 

20世紀前半

1904年 自治法の成立

自治を達成。1874年制定の自治法にしたがい首相職もおかれた。初代首相は地方自治党のハネス・ハフスタイン。

 

1939年 第二次世界大戦勃発

ナチスドイツのポーランド侵攻をきっかけに第二次世界大戦が勃発した。アイスランドは連合国・枢軸国どちらにもつかない中立政策をとったが、連合軍が航路防衛の必要上からアイスランドに侵攻を開始(フォーク作戦)し、イギリス、アメリカに占領された。

 

1944年 デンマークからの分離・独立

第二次大戦の混乱に乗じてデンマークからの分離・独立を宣言し、アイスランド共和国が成立した。

 

現代アイスランド

戦後冷戦下では、アイスランド島が北極海をはさみソ連と対峙していたため、アメリカを中心とする西側諸国にとって高い戦略的重要性を帯びることになります。首都レイキャビクにはNATO軍基地が置かれるなど、冷戦終結まではアメリカを中心とする西側諸国の強い影響下にありました。しかし冷戦終結とともに駐屯していたアメリカ軍なども撤退していきました。

 

 

 

20世紀後半

1947年 OEECに加盟

欧州統合に先立つ概念をもつ「欧州経済協力機構OEEC」に加盟した。OECD(経済協力開発機構)の前身となった。

 

1949年 NATOに加盟

ソ連を中心とする共産圏に対抗する為に設立された「北大西洋条約機構(NATO)」に加盟した。

 

1951年 冷戦激化をうけアメリカ軍が駐留

冷戦が激化したことで、アメリカ軍が駐留を開始する。

 

1955年 タラ戦争の勃発

アイスランドとイギリスの間で、漁業専管水域における漁業権を巡る武力衝突「タラ戦争」が発生。戦いは三次にわたって続いたが、1976年アイスランド側が勝利したことで終結。

 

1970年 欧州自由貿易連合(EFTA)に加盟

 

1980年 世界初の女性大統領の誕生

ヴィグディス・フィンボガドゥティルが世界初の民選の女性大統領になった。アイスランドの欧州経済領域(EEA)に尽力。1994年に加盟を果たした。彼女は欧州連合(EU)の賛同者だった。

 

1986年 レイキャビクにて米ソ首脳会談

首都レイキャビクのホフディハウスで、レーガンとゴルバチョフによる米ソ首脳会談が行なわれる

 

1991年 アルシング一院制に移行

アルシングが二院制から、完全な一院制に移行

 

1994年 欧州経済領域(EEA)に加盟

欧州経済領域(EEA)に加盟。これにより欧州連合に加盟することなく、EUの単一市場に参加することができるようになった

 

1996年 北極評議会に加盟

北極圏における経済活動や環境保護に関する協議・協力を目的に設立された北極評議会に加盟

 

21世紀

2006年 アメリカ駐屯軍の撤退

冷戦時代から駐留していたアメリカ軍が撤退。ケプラヴィーク基地が閉鎖され、今や同国最大の空港であるケプラヴィーク国際空港となる。