
ヨーロッパ内陸部の気候様態
Dfa:夏暑い・冬寒い/Dfb:夏涼しい・冬寒い/Dfc:夏かなり短い・冬きわめて長く厳しい
出典:著者:Beck, HE, McVicar, TR, Vergopolan, N., Alexis, B., Lutsko, NJ, Dufour, A., Zeng, Z., Jian, X., van Dijk, AIJM, Miralles, DG / Wikipedia commons CC BY 4.0より
海から離れたヨーロッパ内陸部──たとえばオーストリア、チェコ、ハンガリー、ポーランド、ルーマニアなど──に足を運ぶと、「海沿いのヨーロッパ」とはまったく違う気候の顔が見えてきます。朝晩の気温差が大きかったり、夏は意外と蒸し暑かったり、冬はガツンと冷え込んだり…ここには内陸性気候ならではの特徴があるんです。今回はそんなヨーロッパ内陸部の気候的な特徴を、海との距離・季節ごとの違い・人びとの暮らしへの影響といった視点から、わかりやすく解説していきます。
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内陸性気候といえば、まず押さえておきたいのが寒暖差の激しさです。
内陸では海のように気温を“緩衝”してくれる存在がないため、日射によって日中はぐんぐん気温が上がり、逆に夜は地熱が逃げやすくて気温が一気に下がります。とくに春や秋は、昼は20℃、夜は5℃といった極端な気温差もよく見られます。
夏は30℃を超える猛暑になる一方、冬は-10℃以下に冷え込む日もあるなど、年較差も非常に大きいのが内陸の特徴。とくにポーランドやハンガリーの冬はしっかり雪も降り、同じヨーロッパでも海沿いとは全く別世界です。
海風が届きにくい内陸部では、湿度の傾向にも大きな違いが出てきます。
夏の気温は高くなりますが、湿度はわりと低め。そのため、同じ30℃でも日本のようなジメジメ感は少なく、カラッとした暑さになることが多いです。冬は逆に乾燥が強く、喉や肌がすぐにパサつくので注意が必要です。
年間を通して雨が満遍なく降るわけではなく、夏の午後に雷をともなう夕立が集中する傾向があります。冬は空気が乾いていて降水量も少なめ。ただし気温が低いため、少ない水分でも雪になりやすいという特徴があります。
こうした内陸特有の気候は、生活様式や農業、都市のつくり方にも大きな影響を及ぼしてきました。
断熱性の高い建材や、二重窓・厚手のカーテンなどが一般的。また、夏の暑さ対策として屋根裏部屋には通気口を設けるなど、内陸気候に適応した住宅設計が発展してきました。
寒暖差の大きさが作物の味に深みをもたらすこともあり、ハンガリーのトカイワインや、オーストリアのリンゴ栽培などが有名です。また冬の寒さを利用して冷涼型の麦やビートの栽培が盛んに行われているのも、内陸らしい農業スタイルですね。
このように、ヨーロッパ内陸部の気候は、寒暖差の激しさと乾燥、季節ごとの気温のメリハリが際立っています。海に囲まれた日本とはまた違った“地の厳しさ”と“恩恵”が共存しているんですね。
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