
アイスランド防衛隊の紋章
「軍隊を持たない国」と聞くと、平和的で理想的なイメージを思い浮かべる方も多いかもしれません。実際にヨーロッパ北部に位置するアイスランドは、独立国家でありながら正規の軍隊を保有していません。それではアイスランドはどうやって国を守っているのでしょうか。この記事では、アイスランドの安全保障の仕組みと、沿岸警備隊の装備、そしてその「強さの源泉」についてご紹介いたします。
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まずは「軍を持たない国」となった経緯を見てみましょう。アイスランドは地理的に北大西洋の要所に位置しており、軍事的にも決して無関係ではありませんでした。
1944年にデンマークから独立した際、アイスランドは常備軍を持たない国となりました。人口規模が小さく、国防費を捻出するのが難しかったことも理由の一つです。その代わり、国防の役割は沿岸警備隊や同盟国との協力に委ねられることになりました。
第二次世界大戦中、戦略的に重要だったアイスランドにはイギリス軍、後にはアメリカ軍が駐留しました。冷戦期にはアメリカ空軍のケプラヴィーク基地がNATO防衛の拠点となり、ソ連への監視や大西洋の安全確保に大きな役割を果たしました。
2006年にアメリカ軍が撤退した後も、アイスランドはNATO加盟国として集団防衛体制に組み込まれています。必要な時には同盟国の軍が支援に入り、自国は沿岸警備や捜索救難、平和維持活動などに力を注いでいます。
では、軍を持たないアイスランドはどのような装備を整えているのでしょうか。中心となるのは沿岸警備隊であり、その装備は「軍艦」や「戦闘機」というよりも、警備と防衛に特化したものです。
沿岸警備隊の哨戒艦がアイスランド防衛の主力です。代表的なのはイーギル・スタッダソン級哨戒艦で、北大西洋の厳しい海で活動できる耐久性を備えています。これらは漁業監視、海難救助、領海防衛に活躍しています。
哨戒機としてカナダ製のDHC-8(ダッシュ8)を運用しており、海上監視や捜索救難任務に使われています。戦闘機は保有していませんが、NATO加盟国が定期的にアイスランド航空警戒任務を実施し、空域の安全を守っています。
小規模ながら特殊部隊や爆発物処理部隊を持ち、国際平和維持活動(PKO)にも派遣されています。装備は基本的に防衛・警備用であり、軍事侵攻を想定したものではありません。
軍を持たないアイスランドですが、それでは「弱い国」なのでしょうか。実際には、強さの源泉は装備そのものではなく、地政学や国際関係にあるのです。
アイスランドはNATOに加盟しているため、他国からの侵略があれば同盟全体で防衛が行われます。つまり単独の軍力がなくても、集団防衛によって安全が確保されているのです。
北大西洋の要所にあるため、冷戦時代から戦略拠点とみなされてきました。大国にとっても軽視できない位置にあるため、防衛体制の一部として常に意識されています。
アイスランドの強さは、あえて常備軍を持たない選択をし、その分を教育や福祉に資源を振り向けている点にもあります。軍備拡張ではなく、外交と協調で安全を守る姿勢は、現代における一つのモデルケースといえるでしょう。
この記事では、アイスランドが軍を持たない理由から沿岸警備隊の装備、そしてNATOを軸とした安全保障体制についてご紹介いたしました。アイスランドの「強さ」は兵器の多さではなく、国際協力と地政学的な重要性に支えられているのです。小国ながらも独自の道を歩むその姿勢は、現代世界において注目に値します。
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