
ケッペンの気候区分
黄緑の地域が地中海性気候で、緑色の地域が西岸海洋性気候
出典:Photo by LordToran / Wikimedia Commons CC BY-SA 3.0より
地中海性気候と西岸海洋性気候──どちらも「温暖」といわれるヨーロッパの代表的な気候ですが、実はその内実はぜんぜん違います。とくに降水パターンと気温の年較差に注目すると、生活様式や植生、文化まで変わってくるほどの違いがあるんです。今回はこの2つの気候を徹底比較しながら、どこがどう違って、どんな風土を生んでいるのかを、わかりやすくかみ砕いて解説していきます。
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まずは、地中海性気候と西岸海洋性気候が、それぞれヨーロッパのどこに広がっているのか、そしてどんな天候傾向を持っているのかを見ていきましょう。
地中海性気候(Csa,Csb)は、ヨーロッパの南部──とくにイタリア、スペイン、ギリシャ、南仏といった地中海沿岸地域に分布します。特徴は、夏は高温で乾燥、冬は温暖でやや降水というはっきりした季節性。いわば「夏に乾いて冬に湿る」気候なんですね。
西岸海洋性気候(Cfb)は、イギリス、フランス西部、ドイツ西部、オランダ、ベルギーなどの北西ヨーロッパに分布します。こちらは一年を通じて降水が安定し、気温差が少ないのが特徴。雨が多くて霧も出やすく、「しっとり」した気候です。
この2つの気候で最も顕著なのが、季節ごとの降水量と気温の年較差。この違いが、生活スタイルや服装、建築文化にまで影響を与えています。
地中海性気候では、夏に雨がほとんど降りません。そのため空気が乾いていてカラッとした暑さになり、日差しも強いけど日陰は涼しい、という理想的な観光気候に。一方、冬には偏西風に乗って雨が降るようになりますが、それでも気温はそれほど下がらず、過ごしやすいんですね。
西岸海洋性気候では、夏も冬もそれなりに雨が降るのが特徴。極端な乾季がないため、草や森林が青々としていて、酪農や牧草業に向いています。気温も一年中なだらかで、冬は暖流の影響で冷え込まず、夏も蒸し暑さが少ないという、まさに「温帯の理想形」と言えるでしょう。
気候の違いは、もちろん人々の暮らしや文化のあり方にもつながっています。ここでは、農業や建築、生活習慣といった点から両者を比べてみましょう。
乾燥した夏と温暖な冬という条件は、オリーブやブドウ、柑橘類といった作物の栽培にぴったり。だからこそ、地中海沿岸ではオリーブオイルやワイン文化が根づきました。また、暑さをしのぐために白壁の家やパティオのような建築スタイルも発達しています。
雨が多く湿潤な西岸海洋性気候では、牧草がよく育つため、酪農や乳製品の生産が盛んです。また湿気に強い石造の家屋や急勾配の屋根など、雨対策の建築も特徴。さらに、雨と霧が多いことで室内の灯りや暖炉文化も根づいてきたんですね。
このように、地中海性気候と西岸海洋性気候は、似ているようで全然違う気候なんです。季節ごとの雨の降り方、気温の変化、それに基づく作物や建築、暮らし方──それぞれの地域に根ざした風土が、まさに気候によってかたちづくられてきたというわけなんですね。
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