古代ローマにおける「パンとサーカス」とは?

 

パンとサーカス」というのは食糧(パン)と娯楽(サーカス)のことで、これらで国家に懐柔される国民に対する揶揄として、詩人ユウェナリス(前60年〜130年)が生み出した言葉です。

 

古代ローマ政府は、しばしば国民の政治的不満を発散させるため国民に食糧と娯楽を提供していました。実際それは効果を発揮し、国民はどんどん政治に無関心になっていったのです。

 

パンとサーカスの意味

具体的には「パン」というのは主に穀物のこと、「サーカス」というのは競技場での戦車競走や円形闘技場での剣闘士試合のことです。

 

戦車競走はラテン語でキルクス(circus)といい、英語のサーカス(circus)はこの言葉に由来しています。

 

パンとサーカスの背景

前3世紀以降、海外属州の拡大で中小農民が没落し、無産市民が大量に生み出されました。無産市民といっても奴隷ではないので、選挙権は持っており、元老院議員は彼らの票を欲します。

 

そして退屈で生活に困窮している無産市民は、何よりも食糧と娯楽を提供してくれる議員に投票したので、議員も苦労して優れた政策を考えるよりも、ただただ人気取りのために金を出して「パンとサーカス」を提供することばかりに力を入れるようになったのです。