ナポレオン戦争はヨーロッパの歴史を変えた出来事であり、その中で特に注目すべきは、ナポレオン・ボナパルトのロシア遠征です。この遠征は明らかな失敗に終わり、ナポレオン帝国の終焉を加速させました。では、その失敗の理由とは何だったのでしょうか。

 

 

ロシアの冬と補給問題

最初に挙げられる理由は、ロシアの厳しい冬と補給問題です。ナポレオンは1812年の夏にロシアへ侵攻しましたが、その前にロシア軍はスコロチャヤ戦術（焦土作戦）をとりました。これにより、ナポレオン軍がロシアへ侵攻したときには食糧や供給物資がほとんど手に入らない状況になっていました。また、遠征が長引くにつれて、ロシアの厳しい冬がナポレオン軍に大打撃を与え、多くの兵士が寒さと飢餓で命を落としました。

 

ゲリラ戦と兵士の士気

次に、ロシアのゲリラ戦術と兵士の士気低下も大きな要因でした。ロシア人は祖国を守るために一致団結し、ナポレオン軍に対してゲリラ戦を展開しました。これにより、ナポレオン軍は前線だけでなく後方でも戦う必要があり、兵士たちは常に緊張と不安の中で生活することとなりました。これは兵士の士気を大きく下げ、戦力の低下につながりました。

 

ナポレオンの指導力

最後に、ナポレオン自身の戦略と指導力が問題だったとも指摘されています。遠征初期にはモスクワを占領したものの、ロシア政府や軍はモスクワから撤退し、ナポレオンは事実上何も得ることができませんでした。これにより、ナポレオンは遠征の目的を見失い、結局撤退を余儀なくされました。

 

そもそもなぜロシア遠征に踏み切ったのか

ナポレオンがロシア遠征に踏み切った理由は、複数あります。主な動機の一つは、1812年当時のヨーロッパの政治的状況にありました。ナポレオンはヨーロッパにおけるフランスの覇権を確立し、特にイギリスへの経済封鎖を強化するために、ロシアに圧力をかける必要がありました。

 

大陸封鎖令の履行

ナポレオンが1806年に発布した大陸封鎖令は、イギリスとの貿易を禁止することをヨーロッパ諸国に求めるものでした。しかし、ロシアはこの封鎖令の履行に消極的であり、ナポレオンはこれに対する強硬な姿勢を示す必要があると考えました。

 

ロシアとの対立

また、ロシアとフランスは多くの地政学的な利害が対立しており、特に東欧における影響力の拡大をめぐっては緊張が高まっていました。ナポレオンは、ロシアに対する圧力を高めることで、その影響力を抑制しようと考えていました。