
ルーマニアの国土
ヨーロッパ南東部に位置し、バルカン半島の一角を占めるルーマニア。黒海に面しながら、内陸には高原や山岳地帯、そして広大な平原が広がるという、じつにバランスのとれた地形を持つ国です。その地理的な多様性が、農業・交通・気候・生態系など、あらゆる面に影響を及ぼしてきました。今回はそんなルーマニアの地理的特徴を、「地形」「気候」「環境」の3つの視点から、わかりやすくかみ砕いて解説します。
ルーマニアの大地は、「山・高原・平野・海岸」が見事に組み合わさった立体的な構造です。
カルパティア山脈が国土の中央をぐるりと囲むように走っており、標高2,500メートル級の山々が連なります。この山岳地帯は天然の防壁でもあり、同時に森林資源と観光の宝庫でもあるんですね。
南部にはドナウ川が流れ、流域にはワラキア平原と呼ばれる肥沃な大地が広がっています。また、東部ではドナウ川が三角州を形成し、ドナウ・デルタ※という独特な湿地帯となって黒海へと注いでいます。
※ドナウ・デルタ
ヨーロッパ第2の大河ドナウ川が黒海に注ぐ際に形成した三角州で、ルーマニアとウクライナにまたがる。広大な湿地帯には多様な動植物が生息し、ユネスコ世界自然遺産にも登録。漁業・観光資源としても重要で、自然と人間の共存が見られる地域。
ルーマニアの気候は地域ごとに性格が異なり、「大陸性」と「地中海性」の中間的な表情を見せてくれます。
トランシルヴァニア高原などの内陸部では、温帯大陸性気候が支配的です。夏は暑く乾燥し、冬はしっかり冷え込み、降雪も多くなります。寒暖差が大きいぶん、季節の移ろいをダイナミックに感じられる地域です。
東部の黒海沿岸部では、地中海性の影響を受けて冬でも比較的温暖で、降水も多めになります。こうした気候のおかげで、コンスタンツァなどの沿岸都市はリゾート地としても人気です。
自然環境の豊かさもルーマニアの魅力のひとつ。山、川、森、そして湿地と、さまざまな生態系が共存しています。
ドナウ・デルタはヨーロッパ最大級の湿地帯で、ユネスコ世界遺産にも登録されています。ここには300種以上の鳥類と多くの魚類が生息し、生態系の宝庫となっています。漁業と観光の両方が発達している地域でもあるんです。
カルパティア山系にはブナやモミなどの森林が広がり、オオカミやヒグマなどの大型哺乳類が今なお生息する、ヨーロッパでも貴重な自然環境です。ルーマニアは国立公園や自然保護区の数も多く、環境保全の取り組みも進められています。
このように、ルーマニアは山と平野、川と海、寒冷と温暖が絶妙に同居する“地理の縮図”ともいえる国。その自然の多様性こそが、ルーマニアという国の文化や暮らしを支えているんです。
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