
ゼウス神殿
TravelCoffeeBookによるPixabayからの画像
ゼウス神殿って聞くと、「ああ、古代ギリシアの一番偉い神様の家だ!」ってすぐイメージできますよね。でも実は、ギリシア各地やローマ世界にゼウスの神殿は複数あって、その中でも特に有名なのが、オリンピアにあるゼウス神殿なんです。ここは古代オリンピック発祥の地としても知られ、かつては世界七不思議の一つ「ゼウス像」が置かれていました。今回はこのオリンピアのゼウス神殿にスポットを当て、「場所・環境地理」「特徴・建築様式」「建築期間・歴史」の3つの視点から、じっくりと見ていきます。
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ゼウス神殿は、ペロポネソス半島西部のオリンピア遺跡内にあります。周囲は緑豊かな平原とアルフェイオス川が流れる穏やかな環境で、宗教儀式や競技大会にぴったりの場所でした。
オリンピアは古代ギリシア世界における重要な宗教拠点で、4年に一度、全ギリシア規模の祭典(古代オリンピック)が開催されました。神殿はその中心的存在でした。
川と森に囲まれた環境は神聖視され、ゼウスを讃える儀式に最適と考えられていました。競技場や祭壇も同じ敷地内にあり、宗教とスポーツが一体となった空間でした。
当時のオリンピアは辺境の地ではあったものの、各都市国家から巡礼者や競技者が集まり、神殿は大勢の人々で賑わいました。
ゼウス神殿はドーリア式建築の代表的な神殿で、その規模と荘厳さは群を抜いていました。
神殿の長さはおよそ64m、幅は28m、高さは約20m。正面6本、側面13本の巨大なドーリア式列柱が並び、その存在感は訪れる者を圧倒しました。
内部には彫刻家フェイディアス(紀元前5世紀)による黄金と象牙で作られた高さ約12mのゼウス像が鎮座していました。この像は世界七不思議の一つとして有名で、神殿の象徴でもありました。
東西の破風(ペディメント)には神話の戦いの場面が彫刻され、特に東側にはゼウスが中心に立つ戦車競争のシーン、西側にはケンタウロスとラピテス族の戦いが描かれていました。
ゼウス神殿は、ギリシア世界における最大級の神殿のひとつで、戦争の勝利を記念して建てられました。完成後は古代オリンピックの舞台としても活躍し、長く人々の信仰と誇りの象徴であり続けました。
建設が始まったのは紀元前470年ごろ。これは、エーリス人が宿敵ピサ人との戦いに勝利した記念事業でした。設計を手がけたのは建築家リボンとされ、当時の最新技術を取り入れた堂々たるドーリア式神殿が構想されます。約14年の工期を経て、紀元前456年に完成しました。
ゼウス神殿は、古代オリンピック開催時の宗教儀式や開会式の中心舞台として機能しました。ギリシア各地から集まった人々が、競技の前後にゼウスへ祈りを捧げ、平和と栄光を誓ったといわれます。また、内部には黄金と象牙で作られたフィディアス作の巨大なゼウス像が安置され、これが「世界の七不思議」のひとつに数えられるほど有名でした。
ローマ支配下でも信仰は続きましたが、西暦4世紀末、キリスト教が国教化されると祭祀は全面的に禁止されます。その後、地震が神殿を直撃し、多くの柱が倒壊。残った石材は近隣の建築資材として転用され、神殿は急速に姿を消していきました。現在は列柱の一部が復元され、訪れる人々はその壮大さをわずかに感じ取ることができます。
このようにゼウス神殿は、オリンピアの聖域を象徴する巨大なドーリア式神殿であり、宗教・芸術・スポーツが融合した古代ギリシア文化の縮図なのです。内部にあった黄金と象牙のゼウス像は世界七不思議として歴史に名を刻み、神殿そのものも古代人の技術と信仰の高さを物語っています。今は廃墟となっても、残された石柱が静かに当時の栄光を語り続けているのです。
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