
スペインの国土
ヨーロッパ南西部、イベリア半島の大部分を占めるスペインは、山・高原・海岸線・乾燥地帯といった多様な地形と気候が織りなす「地理の万華鏡」のような国。アンダルシアの灼熱、ピレネーの雪、カンタブリアの緑、カナリア諸島の火山風景──その自然の豊かさは、スペインという国の文化や歴史の多様性を支えてきました。今回は、そんなスペインの地理的特徴を「地形」「気候」「環境」の3つの視点から、わかりやすくかみ砕いて解説します。
スペインの地形は「高くて広い内陸」と「複雑に入り組んだ海岸部」に分けられます。
国土の中心にはメセタ(中央高原)が広がっていて、平均標高600〜700メートルというヨーロッパでは珍しい内陸高原国家です。この高原をタホ川・ドゥエロ川・グアディアナ川などの大河が横断し、国の骨格を成しています。
北にはピレネー山脈、西にはカンタブリア山脈、南にはシエラ・ネバダ山脈といった山岳地帯が取り囲み、まさに「天然の要塞」のような構造。さらに地中海沿岸はビーチが多く、大西洋側は断崖絶壁や入り江が続くなど、海岸地形のバリエーションも豊富です。
スペインの気候は、地形の影響で地域ごとにまったく異なる性格を見せています。
地中海沿岸部(バルセロナやバレンシアなど)では地中海性気候(Cs)が支配的で、夏は暑く乾燥し、冬は温暖で雨が多め。この気候がオリーブ・ブドウ・柑橘類などを育て、スペイン料理やワイン文化の礎になっています。
メセタ高原やマドリード周辺では、寒暖差の大きい大陸性気候が見られます。冬は氷点下になり、夏は40℃近くまで上がることも。降水量は少なく、乾燥した空気が特徴です。
スペインの自然環境は、“乾いた大地”というイメージとは裏腹に、豊かな生態系を秘めています。
スペインは国立公園や自然保護区の数がヨーロッパ最多級で、ドニャーナ国立公園やピコス・デ・エウロパなど、生物多様性に富んだ地域が点在。特に渡り鳥やイベリアオオヤマネコといった希少動物の保護が進んでいます。
アフリカ沖に浮かぶカナリア諸島はスペイン領でありながら、火山地形と亜熱帯性気候という独自の地理を持っています。テイデ山(3,718m)はスペイン最高峰であり、観光・研究の両面で注目されているエリアです。
このようにスペインは、高原・山・海・島という多層的な地理条件がひしめく国。自然の多様性がそのまま地域文化の多様性につながり、豊かな歴史と暮らしを形づくってきたんですね。
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