アイルランドは、1939年から1945年にわたって続いた第二次世界大戦中、中立政策をとっていました。数万人の義勇兵は大戦に参加したものの、国家としては、連合国軍・枢軸国双方から、参戦の圧力を受けても中立の立場を貫き通し、どの国にも基地の提供をしませんでした。アイルランドはなぜ、ここまで中立にこだわったのでしょうか。その理由を解説していきたいと思います。
アイルランドが第二次世界大戦に参戦しなかった一番の理由は、国民感情の問題が大きいと思われます。まず第二次世界大戦とは、世界中の国をまきこんだ史上最大規模の国際戦ですが、ざっくり単純化した構図を見れば、イギリスを中心とする連合国と、ドイツを中心とする枢軸国の戦いであるとわかります。
そしてアイルランドは、中世以降、侵略・弾圧によりイギリスに支配され、圧政に苦しんでいた、という史実を抑えておく必要があります。当時のアイルランドはイギリス連邦傘下の自治国でしたが、アイルランド国民の多くは、イギリスからの真の独立を望んでいたのです。
1939年ナチスドイツがポーランドに侵攻し、イギリス・フランスの対独宣戦で第二次世界大戦の幕が開けましたが、アイルランドは、ドイツに組することこそしませんでしたが、イギリスに組する義理もないということで、中立の方針をとったのです。
アイルランドに参戦に消極的だったのは、地理的な要因も大きかったといえます。世界有数の軍事力を持つイギリスのさらに沖合にあるアイルランド島までは、戦火は及ばないであろうと考えていたのです。
しかしドイツが大陸を制圧したことで、ドイツ空軍によるイギリスへの空爆が開始されるなど、当初の楽観的な見方は打ち砕かれました。危機感をつのらせたアイルランドは、正式に参戦こそしませんでしたが、連合国に多くの義勇兵を送り込んだり、情報提供するなど、積極的な協力を行うようになりました。
そういう意味では、第二次世界大戦時のアイルランドは完全中立とはいいがたく、決してファシズムを容認していたわけでもないことがわかります。
アイルランドにとって最も親密な関係にあったアメリカが、最初孤立主義政策をとっていたため、アイルランドもその政治方針に合わせたといわれています。
しかしアメリカは日本の真珠湾攻撃をきっかけに、序盤から参戦しています。これにより物量に差をつけられたドイツは徐々に劣勢に転じていきました。
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