
ロシア南西部のヴォルゴグラード
ヨーロッパでは珍しいステップ気候(BSk)に属する都市。奥にそびえるのは第二次世界大戦中の「スターリングラード攻防戦」での勝利と犠牲を記念した「母なる祖国像」(全長85m)
出典:Photo by Leo Medvedev/ Wikimedia Commons CC BY-SA 4.0より
ヨーロッパ東部や中央アジアに広がる「ステップ気候」──それは、森林が育たず草だけが風に揺れる、ちょっと乾いた景色の世界です。でもなぜ、この地域は雨が少ないのでしょうか?そして、どんな気候的な特徴があるのでしょうか?今回は、ステップ気候の基本的な特徴を、特に「降水量の少なさ」という観点から、気候の仕組みと歴史的な背景も交えてわかりやすくかみ砕いて解説します。
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まずは、ステップ気候がどんな地域に広がっていて、どんな気温や降水のパターンを持っているのか、基本情報を押さえておきましょう。
ステップ気候は年間降水量が250~500mm程度の「半乾燥地帯」。完全な砂漠ではないけれど、森林を育てるにはちょっと足りない…そんな微妙なバランスの土地です。ヨーロッパではウクライナ東部、ロシア南西部、モルドバ南部などに見られます。
ステップ気候では夏は30℃以上になる一方で、冬は-20℃以下になることもあるくらい、寒暖差がとにかく激しいんです。しかも、年によって雨の量にも大きな変動があり、農業にはちょっと気まぐれな気候ともいえます。
では、どうしてステップ気候では雨が少ないのか?その理由は「海からの距離」と「風の性質」にあります。
ステップ気候は大陸の内陸部に多く、海からの湿った空気が届きにくいのが特徴です。海に近ければ近いほど湿気は多くなりますが、ステップ地帯は大西洋からも、地中海からも遠い場所にあるため、降水がどうしても少なくなるんですね。
さらに、海風が届く方向に山脈が立ちはだかっていることも影響します。たとえば黒海から湿った空気が来ようとしても、カフカス山脈などでブロックされ、ステップ地帯には乾いた空気しか届かない──これが慢性的な乾燥につながっているんです。
雨が少ない中でも、そこに暮らす植物や動物たちは独自のスタイルで適応しています。
ステップの植物は、葉が細くて水分の蒸発を防ぐ構造になっており、しかも毎年生き残る「多年草」が中心。深く根を張ったり、雨が降ったときだけ一気に成長するなど、水の使い方がとても効率的なんです。
代表的な動物にはサイガアンテロープやマーモットなどがいて、暑い昼間を避けて穴で過ごしたり、冬の寒さには冬眠でしのぐなど、環境に合わせた暮らし方をしています。まさに「風土とともに生きる」存在ですね。
ステップ気候は、「雨が少ないけれど完全な砂漠ではない」という、絶妙な自然条件がつくり出した気候帯でした。内陸の位置や山の影響で湿気が届かず、だからこそ独特の草原風景と遊牧文化が育まれてきたわけです。乾燥と共存する知恵が、この風土のなかに息づいているのです。
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