スペイン料理の多様性は、古代から近代にかけ、世界中からイベリア半島に様々な食材がもたらされたことが背景にある。
スペインの国土のあるイベリア半島というのは、古代から中世にかけて、様々な民族の支配を受けてきました。古代にはギリシア人がオリーブを、フェニキア人がブドウを、ローマ人がオリーブオイルの製法とにんにく、小麦、豚を。そして時代が中世に移り、8世紀末にアラブ人がサフランをもたらしました。
今「スペイン料理に欠かせない」とされる、ありとあらゆる食材は、長い時間をかけて、様々な民族によってもたらされたものなのです。歴史の積み重ねが、今のスペイン料理を成していると思えば、いざ食す際の味わいもひとしおなのではないでしょうか。
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オリーブをもたらした古代ギリシア人、オリーブオイルやにんにくをもたらした古代ローマ人の影響はもちろん大きいのですが、何より現在のスペイン料理に絶大な影響を残したのは、700年にもおよぶアラブ人による支配です。
7世紀末に中東に広域国家を築いたアラブ人は、瞬く間に勢力を拡大し、8世紀にはアフリカを経て、イベリア半島に進出しました。そしてそれまでイベリア半島にはなかった、米(サフラン)・ナス・玉ねぎなどをもたらし、スペイン料理に革新を起こしたのです。
1492年、コロンブスによるアメリカ大陸「発見」およびスペインによる南米植民地化を皮切りに、スペインにはトマト、じゃがいも、かぼちゃ、唐辛子、ピーマンなど、様々な中南米原産の作物がもたらされました。現在スペイン料理に使われる野菜を見ると、これら中南米原産のものが非常に多く、大航海時代がいかにスペイン料理に重大な影響を与えたかわかります。
中南米原産の野菜を使うスペイン料理
アンダルシア名物の冷製スープ「ガスパチョ」にはトマトが、スペイン風オムレツ「トルティーヤ」や、ピリ辛ソース付きポテトフライ「パタタスブラバス」にはジャガイモが使われており、その他ピーマンや青唐辛子を使った料理も数多く存在します。
現代になっても、スペイン料理には革新が起こっています。1970年代、フランスで起こった「ヌーベル・キュイジーヌ(新しい料理)」に刺激を受け、新しい素材や調理技法を使い独創的にアレンジしたスペイン料理が登場するようになるのです。
それは「ヌエバ・コシーナ(新しい料理)」と呼ばれ、アルギン酸や液体窒素などを用いて素材を瞬時に固めたり、凍らせたりと、まるで科学実験のような今までにない調理法が、世界中から注目を集めたのです。
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