
西ヨーロッパ熱波時の地表温度マップ(2022年6月18日)
Copernicus Sentinel-3衛星のデータに基づき、40度以上の異常な高温が広がる熱波の様子
出典:欧州宇宙機関(ESA) /CC BY-SA IGO 3.0より
近年、ヨーロッパでは「熱波(ヒートウェーブ)」が頻発し、40℃を超える日もめずらしくなくなってきました。かつては「夏でも涼しい」が当たり前だったはずのフランスやドイツ、イギリスでさえ、エアコンの導入が進むほど気温上昇が深刻化しています。でも、いったいなぜヨーロッパでこんな異常な暑さが増えているのか?そしてその影響はどこまで広がっているのか?今回は、ヨーロッパにおける熱波の原因と影響について、地理や社会の視点からわかりやすく解説していきます。
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まずは「そもそもどうして熱波が起こるのか?」という疑問に答えていきましょう。
ヨーロッパでの熱波の大きな要因がサハラ高気圧です。これはアフリカのサハラ砂漠上空に発生する非常に強い高気圧で、これが夏になると偏西風の蛇行などをきっかけにヨーロッパ方面へと北上してくるんです。この高気圧の下では雲が発生しにくく、強烈な日射が地表をジリジリと焼いていきます。
熱波が長引くときは、大気の流れが一時的に止まるブロッキング高気圧が発生していることが多いです。これによって熱が逃げず、高温状態が何日も続くという事態に。とくに2022年のヨーロッパ熱波では、このブロッキングが原因で40℃超えが各地で観測されました。
では、実際にヨーロッパが熱波に見舞われると、どのような影響が出るのでしょうか?
高齢者を中心に熱中症や脱水症状が多発します。日本のようにエアコンが各家庭に普及していないため、特にフランスやイギリスなどでは屋内にいても命の危険があるというケースが増えているんです。2003年のヨーロッパ熱波では、全体で7万人以上の死者が出たとも言われています。
高温と乾燥が続くことで、小麦・トウモロコシ・ブドウといった作物が深刻なダメージを受けることがあります。また、水不足によって水力発電の効率が下がる、原子力発電所の冷却水が足りなくなるといったインフラ面への影響も無視できません。
熱波の頻度が上がってきたことで、各国もさまざまな対応を始めています。
もともと「夏は涼しい」が前提だったヨーロッパでは、エアコンの普及率が低く、公共交通機関や病院ですら空調がないことも多かったんです。しかし近年の熱波増加により、学校や高齢者施設にエアコンを導入する動きが加速しています。
都市のヒートアイランド対策として、緑化の推進や遮熱舗装の導入が進められています。また、建築物自体も断熱性能を上げたり、通気性を改善する設計が求められており、古い建物が多いヨーロッパでは大きな転換点となっているのです。
このように、ヨーロッパの熱波は気候変動の影響で年々深刻化しており、人の命から食料、都市構造にまで影響を及ぼしています。かつて「避暑地」と呼ばれた地域も、もはや安全とは言い切れない──そんな時代が始まっているのかもしれませんね。
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