パックス=ブリタニカからパックス・アメリカーナに変わった理由とは?

 

パックス・ブリタニカ(イギリスによる平和)とは、19世紀初頭から20世紀初頭にかけてのイギリスの空前の繁栄ぶりを指す言葉で、古代ローマ帝国の「パックス・ロマーナ」(ローマによる平和)に由来しています。「帝国の世紀(imperial century)」とも呼ばれています。18世紀にいちはやく産業革命を成し遂げたイギリスは、その圧倒的な工業力と海軍力(シーパワー)により世界帝国を築き上げ、「世界の警察」として世界の秩序を保っていたのです。

 

 

パックス・アメリカーナへ

19世紀半ばから、ウィーン体制の崩壊で帝国の基盤が揺らいだのに加え、工業化で急激な発展を遂げたドイツアメリカが、イギリスの覇権を脅かすようになりました。

 

そして第一次世界大戦でイギリス経済は大打撃を受け、戦後植民地を維持することが困難になり、連邦制に移行するとともにパックス・ブリタニカは終焉を迎えたのです。国際秩序を左右する超大国の座はアメリカにとってかわられ、パックス・アメリカーナの時代に移行したのです。

 

パックス・アメリカーナの特徴

パックス・アメリカーナの時代は、第二次世界大戦後の1945年から始まりとされます。この時期、アメリカは経済力、軍事力、政治的影響力の三位一体で世界に影響を及ぼしました。国際通貨基金(IMF)、世界銀行といった国際機関の設立にも主導的な役割を果たし、世界経済の秩序を牽引しました。

 

また、冷戦時代においては、アメリカはソビエト連邦とともに二つの超大国の一つとして世界の秩序を支配しました。民主主義と資本主義を擁護し、自由市場経済の模範となる一方で、共産主義との対立も深めました。しかし、冷戦が終わり、21世紀に入るとアメリカの影響力は相対的に衰え始めました。特に2008年の金融危機はアメリカ経済に大打撃を与え、その結果世界経済の格差や不均等が顕在化しました。

 

さらに、アメリカと並行して経済成長を遂げた中国やインドなどの新興国の台頭は、世界のパワーバランスを再度揺らがせています。これらの新興国は、独自の発展モデルを打ち出し、従来のパックス・アメリカーナに対抗する存在となっているのです。

 

以上のように、パックス・ブリタニカからパックス・アメリカーナへの変遷は、世界のリーダーシップがどのように移り変わったか、またその影響力がどのように形成されていったかを示しています。それぞれの時代が持つ特性を理解することで、今後の国際社会の動向を予測する手がかりとなるでしょう。