



緊縮策に反発するEU域内デモの写真
EUの財政ルールや政策判断が、加盟国の国内運営に制約を与える面を示す。
負担感や反発が政治課題になりやすい欠点を象徴する。
出典:『Anti-austerity protest in Brussels on September 29, 2010-2』-Photo by Surat Lozowick/Wikimedia Commons CC BY-SA 3.0
加盟国が集まって一つの大きな枠組みを作るEU。
国境を越えて働けたり、通貨が共通だったり、便利そうな話はよく聞きますよね。
一方で、イギリスの離脱や加盟国同士の対立、ニュースで耳にする不協和音……EUって本当にうまく回っているのでしょうか?
実はEUは、理想と現実のあいだで常に揺れ動く存在です。 「一つになろう」とする力と、「国ごとの事情」を守ろうとする力が、せめぎ合っているんですね。
本節ではこの「欧州連合(EU)が抱える問題点」というテーマを、東ヨーロッパの立場・経済格差・価値観のズレ──という3つの視点に分けて、ざっくり楽しく紐解いていきたいと思います!
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EU難民政策との対立を招いたハンガリー国境フェンスの写真
2015年の柵設置が難民流入対応をめぐるEU内の亀裂を象徴した。
国境管理を「現場の風景」として示せる史料写真。
出典:『Hungarian-Serbian border barrier 1』-Photo by Schmidt Andrea (Delmagyarorszag)/Wikimedia Commons CC BY-SA 3.0
まず注目したいのが、東ヨーロッパの国々です。
ポーランドやハンガリー、チェコなどは、冷戦終結後にEUへ加わりました。
彼らにとってEU加盟は、西ヨーロッパに追いつくための大きなチャンス。
経済支援や市場参加のメリットは、とても魅力的でした。
西ヨーロッパ諸国は、戦争を二度と起こさないために統合を進めてきました。
一方、東ヨーロッパ諸国は、豊かさと安全を求めてEUに入ったという側面が強いんです。
この出発点の違いが、考え方のズレにつながります。
「EUの決まりは大事だけど、自国の判断も優先したい」
そんな本音が、政策を巡る対立として表に出てくるわけです。
EUは、民主主義や法の支配をとても重視します。
ところが一部の東欧諸国では、司法制度や報道の自由を巡ってEUと衝突が起きています。
EU側は是正を求め、場合によっては補助金の停止という強い手段も取ります。
ただ、各国から見ると「内政に口を出されている」と感じやすい。
ここに、深い溝が生まれているのです。

EU域内のGDP格差を色分けした地図
EUのNUTS2地域ごとの一人当たりGDPを色で比較できる。
青が濃くなるほど裕福な地域、赤が濃くなるほど貧しい地域。
出典:『GDP per capita in NUTS 2 EU regions』-Photo by Fede-5-19/Wikimedia Commons CC BY-SA 4.0
EUは一つの経済圏ですが、加盟国の経済力はバラバラです。
ドイツやフランスと、東ヨーロッパ諸国では、平均賃金も物価も大きく違います。
EUでは、人が国境を越えて自由に働けます。
その結果、東ヨーロッパから西へ働きに出る人が増えました。
これは個人にとっては大きなチャンス。
ですが母国側では、若い労働力が流出するという問題が起きます。
医師や技術者が足りなくなる、といった話も珍しくありません。
EUの予算では、豊かな国が多く負担し、発展途上の地域を支えます。
この仕組み自体は連帯の象徴ですが、長く続くと不満もたまります。
「いつまで支援し続けるのか」と考える西側。
「十分ではない」と感じる東側。 同じEUでも、見ている景色が違うことが、経済問題を複雑にしています。

EUの市場政策に抗議するデモ参加者の写真
ストックホルムで行われたEU批判の街頭デモ。
EUへの反感が「群衆」として可視化される瞬間を写す。
出典:『Eu-demonstration』-Photo by Max Ronnersjo/Wikimedia Commons CC BY-SA 4.0
EUは、共通ルールを大切にする組織です。
市場政策、環境政策、人権、難民対応など、統一した方針を打ち出します。
難民受け入れを巡っては、特に東ヨーロッパ諸国の反発が目立ちました。
歴史的背景や社会構造が違うため、受け止め方が大きく異なるのです。
「同じルールを当てはめても、現実は同じにならない」。
この感覚の違いが、EU内部の緊張を高めています。
加盟国が増えたことで、EUは多様性に富みました。
その反面、意見をまとめるのは難しくなっています。
全員が納得する決定を出すまでに時間がかかり、
その間に不満が積み重なる。
EUが抱える問題の多くは、統合の成功ゆえに生まれた悩みとも言えるでしょう。
EUの問題点は、「失敗しているから」生まれているわけではありません。
むしろ、国の数も歴史も価値観も違う国々が、一緒にやろうとしているからこそ見えてくるものです。
特に東ヨーロッパとの関係では、立場の違いをどう埋めるかが大きな課題になっています。
EUは完成された仕組みではなく、今も調整を続ける途中。
その揺れ動きこそが、ヨーロッパの現在地を映しているのかもしれません。
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