西岸海洋性気候が暖かい理由

Biarritz グランドプラージュと灯台

フランス南西部ビアリッツのビーチ
西岸海洋性気候ならではの穏やかな海風と湿った気候が反映された海岸風景。

出典:Photo By Pinpin /Wikipedia commons CC BY-SA3.0より

 

ヨーロッパの西側、たとえばイギリスやフランス西部、オランダといった地域って、緯度のわりには「思ったより暖かい」と感じることが多いんです。たとえば冬のイギリスは、同じ緯度のカナダ東部に比べて格段に過ごしやすい。これは偶然じゃありません。西岸海洋性気候が持つ“ぬくもり”の秘密を、今回は3つの視点からわかりやすくかみ砕いて解説します。

 

 

海のぬくもりが気候をやわらげる

まず最初に注目すべきは、大西洋の存在です。ヨーロッパの西側はこの海に面していて、その海がまるで巨大なストーブみたいな働きをしているんです。

 

北大西洋海流が暖かさを届ける

北大西洋海流という、メキシコ湾からやってくる暖かい海流が、大西洋をぐるっとまわってヨーロッパに届いています。この海流があるおかげで、冬の気温がぐっと下がらずにすむんですね。たとえばロンドンと同じ緯度にあるカナダのモントリオールでは、冬に氷点下20度を下回る日もあるけど、ロンドンではそこまで冷え込むことはまずありません。

 

海が気温を安定させる

海って、気温の変化に対してとても鈍感な存在なんです。昼も夜も、夏も冬も、変化がゆっくり。だから海沿いの地域は「夏涼しく、冬暖かい」という性質を持ちやすいんです。これがまさに、西岸海洋性気候の根幹となっている特徴なんですね。

 

風があたたかさを運んでくる

気温って、空気の動きによってもガラッと変わるもの。とくにこの地域では、空を流れる風が暖かさを運んでくれるんです。

 

偏西風が西から温かい空気を送る

ヨーロッパの上空では、西から東へ偏西風が流れています。これが大西洋の湿った、でもわりと温かい空気をヨーロッパへ押し出してくれるんですね。だから冬でも「しんしんと冷え込む」ような寒さにはなりにくい。じっとりした雨が多いのもこのせいです。

 

寒気が流れ込みにくい地形

ヨーロッパの西側は山が少なくて、比較的なだらかな平野が続いています。このおかげで、北や東からの冷たい空気が流れ込みにくく、かわりに海からの湿った温かい空気が入りやすい。まさに風通しの良さが「暖かさの盾」になっているわけです。

 

緯度のわりに穏やかな自然条件

最後に、地理的な条件そのものが、この地域を“やさしい気候”にしているって話を見ていきましょう。

 

日照時間が冬でも極端に短くない

西岸海洋性気候のエリアって、高緯度にありながらも南北に細長くなく、地形が東西に広がっているのが特徴。だから極端に冬が暗くなることも少なく、日照がある程度確保されるんです。これが体感的な寒さを軽減してくれています。

 

地中海からの影響も受ける

南ヨーロッパに近い地域では、地中海の暖気が混じってくることも。たとえばフランス西部やスペイン北部では、大西洋の湿った空気と地中海からの暖かい風が合流して、気候がマイルドに整えられているんです。

 

西岸海洋性気候が暖かい理由は、海・風・地形という3つのやさしい“環境条件”が絶妙にかみ合っているからなんです。カナダやロシアの同緯度地域と比べても、ひと味違うぬくもりを感じられるのは、そうした自然のコラボの賜物なのですね。