
「ヨーロッパって、雨が多いの?少ないの?」──この質問、じつは一言では答えにくいんです。なぜならヨーロッパは、地中海性気候・西岸海洋性気候・大陸性気候といった複数の気候帯が入り組む地域で、国や都市によってまったく違う顔を見せるからなんですね。あるところでは年中しとしと雨が降るかと思えば、別の場所ではカラッカラで雲ひとつない日が続く。今回はそんな「雨が多い地域・少ない地域」に注目しながら、ヨーロッパの気候の不思議を読み解いていきます。
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まずは“雨が多い”ことで知られる、しっとり系ヨーロッパの地域から見ていきましょう。
偏西風と海の湿気が直撃するイギリス西部やスコットランド高地では、年間降水量が2000ミリ以上になることも。山にぶつかった湿った空気が上昇して雨になる「地形性降雨」が多く、晴れ間の少ない日が続くこともざら。いわゆる「霧と雨のロンドン」というイメージはここから来ているんですね。
ヨーロッパ随一の“雨の都”といえばノルウェーのベルゲン。年間の雨の日は200日超えとも言われ、フィヨルドの険しい地形と北大西洋からの湿った空気が原因。山が湿気をせき止めてしまうため、降ればザーッと本気の雨になりやすいのが特徴です。
一方で、カラッとした空気が気持ちいい“乾いたヨーロッパ”もちゃんと存在します。
ここは典型的な地中海性気候で、夏の降水量はほぼゼロ。6月〜9月の間は、晴れ続きで太陽ギラギラ。セビリアなんかでは、40℃近い猛暑日が続いても、湿気がないから日陰は意外と快適。雨は主に冬場に集中して降ります。
青い空と白い家が印象的なこのエリアも、じつは雨がとっても少ない地域。年間降水量は400〜600ミリ程度で、東京の半分以下。観光にはベストな場所ですが、農業や水資源の確保には頭を悩ませる地域でもあります。
なぜここまで降水量に差が出るのか?そこには、ヨーロッパの“地理的な個性”が大きく関わっているんです。
ヨーロッパ西岸では偏西風+大西洋というダブルの湿気供給源があります。とくに海に近い地域ほど湿った空気がダイレクトに届くため、雨が多くなりがち。一方で、地中海沿岸や内陸部は、乾いた風にさらされやすく、雨が少なくなる傾向にあるんです。
アルプスやピレネー山脈などの山地では、湿った空気が上昇しやすく、雨雲が発達しやすい。でもその向こう側、つまり風下の“雨陰”エリアでは空気が乾燥して雨がほとんど降らないことも。このような“地形の壁”が、降水パターンにバラつきをもたらしているんですね。
このように、ヨーロッパの「雨の多い地域」と「雨の少ない地域」は、風と海と地形の関係で決まっていたのです。同じ大陸でも、ちょっと場所が違えば空模様もガラリと変わる──そんな多様さがヨーロッパの魅力なんですね。
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