17世紀に描かれたテュポーン。風の精ハルピュイア(ハーピー)を従えている。
どんな神話にも偉大なエピソードを持つ英雄がいると同時に、その偉大さを際立たせる敵も存在します。中でもテュポーンはギリシア神話における最大最強の怪物とされています。テュポーンはゼウスに対するガイアの怒りから産み落とされた巨人であり、ゼウスと死闘を繰り広げるほどの力の持ち主。一度は最高神ゼウスを無力化し、洞窟に封じ込めてしまったほどの力を持つ恐ろしい存在として知られます。
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テュポーンは非常に大きく、頭は星にまで届き、腕は伸ばせば世界の東西の端まで届いたといわれています。
テュポーンは大腿から下、または下半身がとぐろを巻く大蛇・毒蛇であり、全身は羽だらけで目や口から火を放ちます。また、肩には百の蛇の頭が生えているとされていますが、手先も複数の蛇の姿であったり、背中に羽が生えている姿が絵画や壺に描かれています。
テュポーンは体から発せられる猛り狂った息(風)は人間に不幸をもたらすとされ、激しい大風を発生させたそうです。彼は「風の神々の父」ともいわれ、火と風を支配していました。天空に向かって突進してくるその恐ろしい姿に、恐れた神々は動物に化けてエジプトに逃げた、だからエジプトの神々は動物の姿をしている、という逸話もあるほどです。
英語で台風をあらわすtyphoon(タイフーン)は風を支配していたtyphon(テュポーン)に由来しているという説があります。また、テュポーンとエジプトのロバ神セトとは下記の様にいくつか共通点があることから同一視されています。
また台風と同じく、昔から人々に恐れられていた疫病は、「悪い神の息」によるものと考えられ、その神の名からtyphus(チフス)と名付けられた、とされています。大きな災害や疫病、人間の力の及ばない脅威を、昔の人々は神がもたらすものだと考えていたことが分かります。
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