亜寒帯気候における「住居」の特徴

亜寒帯気候の住居

亜寒帯地域の住居は断熱性が高く、木材を多用。寒さから守るため密閉性や暖炉の設置が重視される。本ページでは、このような地理的要因やその影響についてさらに詳しく掘り下げていく。

亜寒帯気候における「住居」の特徴

スカンジナビア伝統ログハウス

スウェーデンの伝統的ログハウス
スカンジナビア伝統のログハウスで、頑丈な丸太構造と大きな窓が特徴
高い断熱性を持ち、北欧の寒冷な気候に適応した建築様式

出典:Photo by Daderot / Wikipedia commons CC BY-SA 4.0より


亜寒帯気候に属するヨーロッパの北部や東部。冬は長く厳しく、気温は氷点下が当たり前……そんな過酷な環境の中で人びとはどうやって家を建て、どうやって暖かく暮らしてきたのでしょうか?今回は、ヨーロッパの亜寒帯地域における住居の特徴を、気候との関係からひも解いていきます。



① 寒さをしのぐための工夫

まずは、とにかく「寒さに負けない!」ために施された、住まいの基本構造に注目してみましょう。


断熱性の高い構造

厚い壁、二重窓、屋根裏の断熱材──これが亜寒帯地域の家の定番スタイルです。木材や煉瓦に加えて、近年ではグラスウールなどの断熱材を組み合わせて、家の中の熱を逃がさない工夫が徹底されています。


コンパクトで熱が逃げにくい設計

住宅全体の形状もできるだけコンパクトにまとめるのが特徴です。床面積を抑え、天井も低めに設定することで、室内全体を効率よく暖められるように設計されているんです。


② 文化と結びついた暖房設備

住居の中心には、寒さを和らげるための暖房が欠かせません。それがそのまま文化の一部にもなっているんです。


炉・暖炉・薪ストーブの発達

薪を使った暖炉石造りの炉は、亜寒帯の暮らしの象徴。スウェーデンの「カクリ・オフン(タイル暖炉)」など、室内装飾と暖房を兼ねた美しい炉が各国に存在します。暖を取るだけでなく、料理にも活用される万能設備です。


サウナやバーニャの存在

フィンランドのサウナロシアのバーニャなど、高温の蒸気浴施設も亜寒帯ならでは。これらは別棟に建てられることも多いですが、家屋とつながっている場合も。単なる入浴でなく、身体を芯から温める生活文化として定着しています。


③ 特徴的な外観

寒さと雪との戦いは、家の「見た目」にも現れてきます。


急こう配の屋根

雪が積もりにくくするために、傾斜の強い屋根が多く採用されています。とくにフィンランドやロシアでは、降雪量の多い地域でこのタイプが顕著に見られます。雪下ろし不要な設計が冬場の安全を守っているんです。


色彩豊かな外壁

寒くて暗い冬が長いからこそ、家の外観にはカラフルな塗装を施す地域が多く見られます。たとえばフィンランドの赤い木造住宅「ファールンレッド」、ロシアの水色や緑の壁面など、景観に温かみを与える工夫がなされているんです。


④ 地域性の強い素材と様式

使われる建材や建築方法も、その土地の自然条件に合ったものが選ばれてきました。


木造が基本のスカンディナヴィア建築

スウェーデンやフィンランドでは、森林資源が豊富なため、木造建築が主流。厚い丸太を積み上げるログハウス形式や、加工木材を使った現代的な住宅も一般的です。通気性と断熱性のバランスが重視されています。


石や煉瓦が中心の東欧住宅

一方、ロシアやバルト三国では、木造に加えて石や煉瓦を用いた重厚な構造の家も多く見られます。これは寒さと火災対策を両立させた結果で、都市部では特にこのタイプが増えています。


円錐形の構造をしたサーミ人のテント型住居
地面に半ば掘り下げた形状に、木の骨組みに芝・草・皮をかぶせ断熱性と保温性を保っている

出典:Photo by unknown / Wikimedia Commons CC BY-SA 2.0より


ヨーロッパの亜寒帯地域では、「寒さとどう付き合うか」が住まいの基本にあります。断熱、暖房、建材、色彩──そのすべてが寒さを和らげ、暮らしを快適にするための知恵なんですね。自然に合わせて作られた家には、その土地の人びとの知恵と文化がたっぷり詰まっているのです。