ヨーロッパの海

ヨーロッパの海

 

ヨーロッパ大陸はユーラシア大陸の西端を成し、5000年ほど前から海水面が上昇・下降を繰り返すことで形成された「半島」です。現在は南を地中海、西を大西洋、北を北極海、さらにこれら大海が内包する大小様々な海に囲まれており、ヨーロッパ人の生活と海は古来より密接に関わってきました。

 

 

ヨーロッパ人と海の関わり

ヨーロッパ人は大昔から海を商業航路として利用しており、海を通じて様々な物や資源の移動が繰り返されてきました。その交易は長らく地中海沿岸に限定されていましたが、造船技術や航海技術が発達すると大西洋という大海にも繰り出すようになり、新大陸やアジアとの交易でヨーロッパは空前の繁栄を享受したのです。(大航海時代

 

ヨーロッパをとりまく海

大西洋

大西洋は、ヨーロッパ大陸西側に広がる広大な海です。この大西洋から流れてくる暖流(北大西洋海流)によってヨーロッパは高緯度にもかかわらず温暖な気候となっています。古来より近海では沿岸交易が行なわれていましたが、15世紀になると航海技術の発達により沖合へと繰り出すようになり、「地理上の発見」とともに全世界へと市場が拡大する大航海時代の幕が開けました。

 

地中海

地中海は、ヨーロッパ大陸とアフリカ大陸に挟まれている海です。ヨーロッパ人にとって最も関わりの歴史が長い海といえ、大航海時代の始まりで交易の中心が大西洋に移るまで、ヨーロッパ人の海上交易路といえばこの海でした。古来より地中海世界各国の覇権争いが繰り広げられてきた海でもあります。

 

エーゲ海

エーゲ海は、地中海の一部を構成する小さな入江のような海域で、西と北をギリシャのあるバルカン半島、東をトルコのあるアナトリア半島に囲まれています。古代ギリシア最古の文明エーゲ文明は、この海の島々を中心に栄えたものです。

 

黒海

黒海は、ヨーロッパとアジアの間にある内海です。地中海の付属海。古来より東西交易の中継地として発展し、沿岸都市のコンスタンティノープル(現イスタンブール)は、中世初期から末期まで一大商業都市として栄え、後世のヨーロッパ文化に重大な影響を与えました。また軍事的・地政学的重要性が大きいことから、古来より海の支配権を巡り様々な勢力が争いを繰り広げてきました。

 

カスピ海

カスピ海は東ヨーロッパと中央アジアの境界に広がる「湖」です。「海」の名を冠していますが定義上は湖であり、湖の大きさとしては世界最大です。古来より、ヨーロッパとアジアを結ぶ東西交易路として利用されてきました。キャビアの世界的産地として知られます。

 

紅海

紅海はアフリカ東北部とアラビア半島に挟まれた場所に位置する、南北に長い湾です。1869年のスエズ運河の開設により地中海と繋がり、アジアとヨーロッパを繋ぐ重要な航路となりました。名前は藍藻の繁殖によって海の色が赤く染まることに由来しています。

 

北海

北海は北大西洋の付属海の1つで、イギリス諸島とヨーロッパ大陸との間に広がる大西洋北東部の海域です。この海には「北海油田」と呼ばれる油田・ガス田が多数ある他、中央イギリス寄りの海域には世界三大漁場の1つ「ドッガーバンク」があることでも知られます。記録としては古代ローマ時代の文書に初めて登場し、当時はラテン語で「ゲルマニクム海」と呼ばれていたようです。

 

バルト海

バルト海は北大西洋の付属海の1つで、ヨーロッパ大陸東部とスカンジナビア半島に取り囲まれた海域です。流入河川が多いため、他の海よりも塩分濃度が低く淡水に近いです。中世にはヴァイキングの東方遠征やハンザ同盟の舞台となり、近代に入り工業化が始まると、この海は外海への出口が狭く浅いカテガット海峡しかなく、水の入れ替えが少ないため、廃水による汚染が深刻な問題としてあがるようになりました。

 

アドリア海

アドリア海は地中海の付属海の1つで、イタリア半島とバルカン半島に挟まれた細長い海域です。古来より重要な海上交易路とされ、古代においてはローマ、中世においてはヴェネツィア共和国が長らく制海権を握っていました。大航海時代の幕が明け、交易の中心が大西洋に移るまで、この海が東西交易の中継地として重要な役割を担っていました。