ロマン主義が見せた豊かな想像力と感情の表現は、19世紀初頭のヨーロッパ芸術、音楽、文学において、多大な影響を与えました。しかしながら、その影響力が次第に衰退するに至った理由は、多岐にわたります。
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19世紀の終わり頃になると、文学や芸術の中心は、「感情や想像力」からより「理性的で科学的」な視点へと移っていきました。例えばイギリス人詩人であるマシュー・アーノルド(1822 - 1888)は、ロマン主義の「感情」に対し、「知性」を重視すべきだと主張しています。このような思想の流れは、ロマン主義の衰退を招いた一因と言えます。
また、アメリカやドイツなどの先進国における19世紀後半の産業革命は、都市化を推進し、人々の生活環境を大きく変えました。ロマン主義が賛美した自然や田舎の生活は、急速な都市化の波に押し潰される形で現実と乖離してしまいました。
さらに、ロマン主義の衰退は、新たな芸術運動の台頭とも密接に関わっています。19世紀後半から20世紀初頭にかけては、リアリズムやモダニズムといった新たな芸術思想が生まれ、ロマン主義に代わって主流となっていったのです。
まとめると、科学的視点の台頭、産業革命と都市化による生活環境の変化、新たな芸術運動の台頭が、ロマン主義の衰退を引き起こす主な要因でした。これらの複合的な要素が、人々の価値観や感受性を変え、ロマン主義が持つ感情や想像力を重視する視点が、徐々に色褪せていく背景を作り出したのです。
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