
南欧の太陽が照りつけるスペイン。乾いた大地と険しい山岳、地中海沿岸の湿地、そして広がる平原には、たくましくも個性的な動物たちが息づいています。人と動物の関係もまた、闘牛や牧畜、神話や宗教にまで深く根ざしていて、この国の文化の一部となっています。今回は、そんなスペインの動物たちを「自然」「文化」「代表動物」の3つの視点から、わかりやすくかみ砕いて紹介していきます。
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スペインの多様な自然環境が、どのような動物の暮らしを育んでいるのかを見てみましょう。
スペインの大部分を占めるメセタ(高原)は、夏は灼熱、冬は乾燥した寒さに見舞われる厳しい環境。そんな中でも、乾燥に強い哺乳類や鳥類がたくましく暮らしています。また、ピレネー山脈やシエラネバダ山脈などの高山地帯では山岳性の動物が生息し、標高による生態系の違いがはっきりと見られるんです。
スペイン東部と南部には、温暖で乾燥した地中海性気候の地域が広がります。ここにはドニャーナ国立公園をはじめとするラムサール条約登録の湿地が点在し、多くの渡り鳥や湿地性哺乳類が集まる自然の宝庫となっています。
イベリア半島は、氷河期にも氷に覆われなかったため、動植物が絶滅せずに独自の進化を遂げてきました。イベリアオオヤマネコやイベリアカタシロワシなど、ここでしか見られない希少な動物が数多く存在しています。
スペインでは、動物たちは長いあいだ人びとの暮らしや信仰、芸術に深く関わってきました。
スペインの伝統文化の象徴ともいえる闘牛。動物愛護の観点から現在では見直しの動きもありますが、人と動物の命のやりとりを舞台にしたこの儀式は、古くから生と死、力と美を表現する場とされてきました。
スペインの内陸部や山岳地帯では、羊やヤギの放牧が今も日常風景の一部。メスティーサ(伝統的な放牧犬)など、動物と人とのあいだに築かれた信頼関係は、まさに“共生”のかたちといえるでしょう。
キリスト教の影響が強いスペインでは、動物が聖人の象徴や寓意的な存在としてしばしば登場します。たとえばハトは聖霊を、羊は神への従順を象徴し、修道院では動物の世話が“徳を積む行為”と考えられてきました。
それでは、スペインの自然や文化を象徴する代表的な動物たちを紹介していきます。
スペインの国鳥・イベリアカタシロワシ
スペインの国鳥であり、かつては絶滅寸前だった猛禽。今ではドニャーナ国立公園を中心に保護が進み、少しずつ個体数が回復しています。堂々とした飛翔と鋭い眼光は、まさにこの国の“誇り”そのもの。空の王者として、今もスペインの空を静かに見守っています。
かつてはイベリア半島全域に分布していたこの世界でもっとも希少なネコ科動物は、現在では絶滅寸前の危機にあります。保護活動により再導入が進みつつあり、アンダルシア地方などでその姿が見られるようになってきました。
険しい山岳地帯を巧みに移動しながら暮らす野生ヤギの一種で、特にピレネー山脈ではよく見られます。角が大きく湾曲していて、たくましく乾燥地を生き抜く姿は、スペインの自然そのもののようです。
いわずと知れた闘牛用の牛で、力強さと敏捷性を備えた特別な血統。広い牧場で育てられ、文化的象徴としても扱われています。今では保護種としても登録され、文化遺産と自然保護の交差点として位置づけられている存在なんです。
乾いた大地に生きる野生動物たちと、長い歴史のなかで人とともに歩んできた家畜たち──スペインの動物たちは、それぞれのかたちでこの国の文化と風土を物語っているんですね。
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