
アゾレス高気圧の位置図
夏になるとこの「雲をできにくくする性質」の強力な高気圧帯が地中海域を覆う為に、雨が少なくなる
出典:Author Jeroen / Wikimedia Commons GNU Free Documentation License 1.2より
地中海性気候って「カラッとしてて過ごしやすい」ってよく言われますよね。でも、よくよく調べてみると、夏は雨がほとんど降らなくて、逆に冬にそこそこ雨が降るというちょっと変わった季節パターンをしているんです。このページでは、そんな地中海性気候における「雨季」と「乾季」のしくみと、その背後にある大気の動きについて、わかりやすくかみ砕いて解説します。
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まずは、地中海性気候における「雨季」と「乾季」の基本的な特徴を見ていきましょう。日本とはかなり違うサイクルなので、新鮮に感じるかもしれません。
地中海性気候では冬が雨の季節です。とはいえ、梅雨のようにジメジメ降り続くというよりは、ときどき雨がしとしと降るといったイメージ。この雨は、大西洋から流れ込む低気圧の影響によるもので、特に地中海沿岸部では11月~2月にかけてが降水のピークとなります。
一方、夏場はまったくと言っていいほど雨が降らないのが特徴。6月から8月にかけて、連日晴れ続きという日々が当たり前になってきます。乾いた空気と日差しのおかげで、洗濯物はすぐ乾くし、外遊びも快適な季節なんですね。
この雨季と乾季の逆転現象には、上空を流れる風と気圧の動きが深く関わっています。ちょっとだけ気象学的な視点をのぞいてみましょう。
地中海地域の冬には、西から偏西風に乗って移動性低気圧が次々とやってくるんです。これらの低気圧が大西洋の湿った空気を引き連れて、雨を降らせるというしくみ。とくにフランス南部やイタリア西部など、海に面した地域ではこの影響を強く受けます。
さらに、冬の間には地中海北岸の冷たい空気と、アフリカから上がってくる暖かい空気がぶつかり合うことで、気圧の差が大きくなり、雨雲ができやすくなるんですね。この「気温差のぶつかり合い」が、冬の雨の発生装置になっているわけです。
さて、逆に夏に雨がほとんど降らない理由はどこにあるのでしょうか?そこには“高気圧”という強力な存在が関わっています。
夏になると、地中海地域はアゾレス高気圧と呼ばれる強力な高気圧帯にすっぽり覆われます。この高気圧は空気を上に昇らせず、下に押し込める力があるため、雲ができにくく、雨も降りづらくなるんです。まさに“晴れの圧力”。
地中海沿岸部は山が海から離れている地形が多く、急激な上昇気流が起こりにくいことも、雨雲が発達しにくい要因です。空気が上に持ち上げられなければ、雲にならず、つまり雨にもならないんですね。
このように、地中海性気候の雨季と乾季は、偏西風と高気圧という空のダイナミックな動きによって決まっているんです。冬にしとしと、夏にカラカラ──この独特なリズムが、人々の暮らしや文化にも大きな影響を与えているんですね。
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