亜寒帯気候でさかんな「産業」の種類

キルナ鉱山の採掘現場
ヨーロッパ最大級の鉄鉱石の採掘地として知られるスウェーデン・キルナの地下鉄鉱石採掘風景

出典:Photo by unknown / Wikimedia Commons Public Domainより

 

亜寒帯気候に属するヨーロッパの地域──たとえばスウェーデン北部、フィンランド、バルト三国の一部、そしてロシア西部など──では、寒さが厳しく夏も短いという自然条件の中でも、じつはさまざまな産業が育まれてきました。今回は、そんな寒冷地で根づいてきた産業の種類やその背景にある環境との関係を、わかりやすくかみ砕いて解説します。

 

 

森林資源を活かした産業

亜寒帯気候のヨーロッパでは、広大な針葉樹林を活かした産業がとてもさかんです。

 

林業と木材加工

たとえばフィンランドやスウェーデンでは、森林率がとても高く、国土の7割以上が木で覆われているとも言われます。そんな豊富な森林資源を背景に、伐採→製材→輸出という木材関連のビジネスが国家経済を支えてきました。丸太の輸出だけでなく、紙パルプや家具などの加工業も盛んで、技術力でも国際的な評価を得ています。

 

バイオマスや再生エネルギー

さらに近年では、林業の副産物や間伐材などを使ったバイオマス燃料や木質ペレットなど、再生可能エネルギーの分野にも注目が集まっています。寒さが厳しいこの地域では、「森の恵み」を暖房エネルギーとして有効活用するという知恵が古くから根づいていたんですね。

 

地下資源を活かした産業

亜寒帯気候の下で発展してきたもう一つの柱が、地下に眠る資源を活用した産業です。

 

鉱業と金属精錬

スカンディナヴィア半島やロシア北西部などでは、鉄鉱石・銅・ニッケルといった鉱物資源が多く採掘されてきました。とくにスウェーデンのキルナ鉱山は、ヨーロッパ最大級の鉄鉱石の採掘地として有名です。これらの資源は、鉄鋼業機械工業の土台にもなっています。

 

軍需・輸送機器関連

寒冷地で活動できる特殊技術や装備品の開発も進んでいて、フィンランドのトラック・重機メーカーや、ロシアの兵器産業などがその例です。厳しい自然環境を逆手に取った技術開発が、産業の競争力につながっているのです。

 

寒冷な気候を活かした産業

農業には厳しいイメージのある亜寒帯気候ですが、実は「寒冷地向け」に特化した農業と食品加工が根づいています。

 

酪農と乳製品

この地域では、放牧による酪農が非常に重要な産業です。たとえばフィンランドの牛乳製品は品質が高く、ヨーロッパ内でも高く評価されています。バターやチーズ、ヨーグルトといった加工品も、保存性が高く寒冷地に適しているんですね。

 

ベリー類と発酵食品

また、冷涼な気候に適したブルーベリーやリンゴンベリーなどの果実もよく育ちます。これらはジャムやジュース、果実酒に加工されるほか、保存食品や伝統料理として地域文化にも深く根づいています。加えて、発酵食品(パン、魚介の塩漬けなど)も豊富で、長い冬を乗り越える知恵として発展してきたのです。

 

ヨーロッパの亜寒帯地域では、厳しい自然を乗り越えるための「知恵と工夫」が、産業の形として花開いてきたんですね。森林や地下資源、さらには冷涼地向けの農業まで、気候と共に生きる姿勢が今の産業構造を支えているわけです。