タキトゥスとは何をした人?〜帝政期の歴史を執筆〜


タキトゥスの基本情報

 

本名:コルネリウス・タキトゥス
生誕:55年頃
死没:120年頃
思想:反帝政
民族:ローマ人
主著:『ゲルマニア』『歴史』『年代記』

 

タキトゥス(55年頃 - 120年頃)は帝政ローマ時代の歴史家で、『ゲルマニア』『歴史』『年代記』などの著者として知られる人物です。政治家としても護民官や執政官などいくつかの要職を歴任しています。

 

著作ではアウグストゥスからネロ帝にいたる帝政期の歴史を記述し、共和政を賞賛し、帝政(専制君主制)を批判するなど、帝政初期の暗部が感じ取れるものとなっています。

 

南ガリアもしくは北イタリアの貴族出身で、執筆活動はトラヤヌス帝の治世から開始。98年に最初の作品「ゲルマニア」を完成させています。その後も5代もの皇帝のもと元老院議員を務めた経験を活かし、半世紀におよぶ「生きた歴史」の記述に生涯を捧げました。

 

タキトゥスの『ゲルマニア』の内容

ゲルマニア』(現代は『ゲルマニア人の起源と風俗について』)は、ゲルマニア地方(ドナウ川より北、ライン川より東の地域)の風土、そこに暮らすゲルマン人の慣習・祭祀・政治・社会制度・伝承や、ゲルマン諸部族の特性をまとめた、全46章からなるタキトゥスの代表作です。

 

評価

ローマ帝国の脅威であったゲルマン人を敵視するのではなく、未開の地で力強く生きる「高貴な蛮族」と評し、「退廃的なローマ人」が見習うべき存在として描いています。そのため後世、ドイツで民族主義やロマン主義が台頭するようになると、高く評価されました。

 

しかし古ゲルマン人社会研究のための貴重な文献には変わりありませんが、タキトゥス自身はゲルマニアを一度も訪れたことはなく、全て旅行者からの伝聞をもとに執筆している為、偏見が多く含まれ正確性に欠けるとして、同時代から批判があるのも事実です。