イタリア文学とは、イタリアの作家によって書かれた、あるいはイタリア語によって書かれた文学作品のことで、古代ローマ以来の古い歴史を持ち、数々の著名作家も輩出しています。ただしイタリアの政治的統一が遅かったこともあって、「イタリア文学」と一口にいってもその地域性の強さゆえに一括りに語れない部分もあります。
イタリア文学の歴史
ラテン文学の成立
イタリア文学は古代ローマのラテン文学に起源を持ちます。ラテン文学は、ギリシア文学の影響(南イタリアにギリシア植民市が多数創設されていた為)を受けながら発展し、古代ローマ全盛の帝政期にヨーロッパ世界全域へと広まっていきました。
イタリア文学の成立
ローマ帝国滅亡後、ヨーロッパ各地でラテン語の方言化が進行し、そのうちイタリア半島でみられるようになった言語的特徴をイタリア語と呼びます。そしてアッシジの聖フランチェスコ(1182年-1226年)が宣教活動の一環として制作した新書が、イタリア語で書かれた初の本格的文学作品といわれています。
イタリア三大詩人の誕生
イタリア語成立後、13〜14世紀にかけて、トスカーナ地方フィレンツェを中心に、革新的な文学運動が起こり、イタリア三大詩呼ばれるダンテ、ペトラルカ、ボッカチオなど名作家を輩出しています。
イタリア文学の変遷
ルネサンス(15世紀)、宗教改革(16世紀)、フランス革命(18世紀)、イタリア統一運動(リソルジメント)(19世紀)・・・イタリア半島の歴史は激動で、各時代の文学作品は同時期起きた出来事の影響を露骨に受けています。イタリア王国成立後はヴェリズモ(現実主義)文学が、第一次世界大戦後はモダニズム文学が、第二次世界大戦前後の混乱期にはネオ・レアリズモ文学が栄えたように、この国の文学の潮流は、激動の半島史と共に常に変化し続けたのです。
イタリア出身の作家一覧
黎明期(13世紀〜)
- ダンテ・アリギエーリ
- フランチェスコ・ペトラルカ
- ジョバンニ・ボッカッチオ
- ロレンツォ・デ・メディチ
- アンジェロ・ポリツィアーノ
- バルダッサーレ・カスティリオーネ
- ニッコロ・マキャベリ
ルネサンス以後(17〜18世紀)
フランス革命期(18世紀後期〜19世紀初期)
- ヴィットーリオ・アルフィエーリ
- ウーゴ・フォスコロ
- アレッサンドロ・マンゾーニ
- ジャコモ・レオパルディ
イタリア王国時代(19世紀中期〜20世紀初期)
- ジョズエ・カルドゥッチ
- ジョバンニ・パスコリ
- エドモンド・デ・アミーチス
- カルロ・コッローディ
- フランチェスコ・デ・サンクティス
- イタロ・ズヴェーヴォ
- ルイジ・ピランデッロ
- グラツィア・デレッダ
ファシズム時代(20世紀初期〜中期)
- チェーザレ・パヴェーゼ
- プリモ・レーヴィ
- ナタリア・ギンズブルグ
- アルベルト・モラヴィア
- エルサ・モランテ
- ディーノ・ブッツァーティ
- イタロ・カルヴィーノ
- ピエル・パオロ・パゾリーニ
- ジュゼッペ・トマージ・ディ・ランペドゥーサ
- サルヴァトーレ・クァジモド
- ジュゼッペ・ウンガレッティ
- エウジェーニオ・モンターレ
イタリア共和国時代(20世紀中期〜現在)
- エドアルド・サングイネーティ
- ウンベルト・エーコ
- アントニオ・タブッキ
- ダリオ・フォ
イタリア文学の有名作品
- フランチェスコ『被創造物の歌』(1225年)
- ダンテ・アリギエーリ『新生』(1293年頃)
- ペトラルカ『カンツォニエーレ』(1335年頃)
- ボッカチオ『デカメロン』(1353年)
- マッテーオ・マリーア・ボイアルド『恋するオルランド』(1499年)
- ニッコロ・マキャベッリ『君主論』(1513年)
- アリオスト『狂乱のオルランド』 (1516)
- ピエートロ・ベンボ『俗語論』(1525年)
- バルダッサーレ・カスティリオーネ『廷臣論』(1528年)
- ピエトロ・アレティーノ『談論』(1539年)
- フランチェスコ・グイッチャルディーニ『回想録』(1564年)
- トルクァート・タッソ『解放されたエルサレム』(1575年)
- ジャンバッティスタ・マリーノ『アドーネ』(1623年)
- ウーゴ・フォスコロ『ヤーコポ・オルティスの最後の手紙』(1802年)
- アレッサンドロ・マンゾーニ『婚約者』(1827年)
- ビットリーニ『人間と否と』(1945年)
- パベーゼ『雄鶏の鳴くまえに』(1949年)
- ウンガレッティ『約束の地』(1950年)
- カルビーノ『まっぷたつの子爵』(1952年)
- パゾリーニ『不良少年』(1955年)
- サングイネーティ『ラボリントゥス』(1956)
- パゾリーニ『グラムシの遺灰』(1957)
- ガッダ『メルラーナ街の怖るべき混乱』(1957)
- トマージ・ディ・ランペドゥーザ『山猫』(1958)
- モラービア『倦怠(けんたい)』(1960)
- ジュリアーニ編の詩選集『最新人』(1961)
- バッサーニ『フィンツィ・コンティーニ家の庭』(1962)
- シャーシャ『コンテクスト』(1971)
- カルビーノ『宿命の交わる城』(1973)
- モランテ『歴史』(1974)
- バレストリーニ『描きだされた暴力』(1976)