



ヨーロッパと一口にまとめがちですが、実はその気候、国や地域ごとに驚くほど違うんです。
パリでは小雨がしとしと降っているのに、ローマでは雲ひとつない青空。
その一方で、ストックホルムは思わず肩をすくめる寒さなのに、アテネでは日差しが強くて汗ばむほど──同じ大陸で、こんな光景が同時に起こる。それがヨーロッパの面白さでもあります。
広い緯度差と海・山の影響が重なり合い、ヨーロッパの気候は地域ごとに個性を持つ。
なんとなく「ヨーロッパは涼しそう」「南は暖かい」というイメージだけで見ると、少しもったいないかもしれません。
このページでは、ヨーロッパ各地の気候の違いを、
「なぜ、そんな地域差が生まれるのか?」という視点から整理していきます。
北・南・東・西、それぞれの特徴を押さえながら、気候の背景にある地理や自然条件も一緒に見ていきましょう。
知れば知るほど、ヨーロッパの景色が立体的に見えてくるはずです。
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ヨーロッパでこれほどまでに気候が多彩なのには、ちゃんとした理由があります。
ポイントは、いくつかの地理的な条件が複雑に重なり合っていること。これが、地域ごとの気候を大きく分けている“カラクリ”なんですね。
以下のように、ヨーロッパの気候は海・山・緯度という三つの要素が重なり、モザイク状に分かれているのです。
ヨーロッパ西側は大西洋に面しており、北大西洋海流や偏西風の影響を強く受けます。
そのおかげで、緯度のわりには気温が穏やかで、冬も比較的過ごしやすい地域が多いんです。
一方、東へ進むにつれて海から遠ざかると、大陸性気候の性格が強まり、寒暖差の大きい気候へと変わっていきます。同じヨーロッパでも、体感はかなり別物です。
アルプス山脈やピレネー山脈など、ヨーロッパにはスケールの大きな山脈がいくつも走っています。
これらは単なる地形ではなく、湿った空気や暖気・寒気の移動をせき止める巨大な壁。
山を越えられるかどうかで、雨が多くなったり、乾燥したり、気温が急に下がったり──
山脈ひとつで、気候がガラッと変わる。そんなことが当たり前に起こるのがヨーロッパです。
ヨーロッパは南北に長く広がっているため、緯度の差も無視できません。
北へ行くほど太陽の高度が低くなり、寒さが厳しくなるのは基本中の基本。
スカンジナビア半島のような高緯度地域では、気温だけでなく、昼と夜の長さそのものが大きく変わります。
白夜や極夜といった現象が生まれるのも、まさにこの緯度の影響なんですね。
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ヨーロッパの気候分布図
西のCfb(西岸海洋性:緑)、南のCsa・Csb(地中海性:黄緑)、東のDfa・Dfb(大陸性:紫)、北や山岳地帯のDfc・Dfd(亜寒帯性:ピンク)が帯状に広がっている
出典:Photo by LordToran / Wikimedia Commons CC BY-SA 3.0 / title『Köppen-geiger-hessd-2007』より
ここからは、ヨーロッパを「東欧・西欧・中欧・南欧・北欧」の5地域に分けて、それぞれの気候的な特徴を見ていきましょう。
同じ大陸でも、エリアが変われば体感は別世界──そんな違いが、ここではっきり見えてきます。
ヨーロッパの気候は、地域ごとに性格がはっきり分かれているんです。
ポーランド、ウクライナ、ルーマニアなどを含むこのエリアは、大陸性気候が主役。
夏はしっかり暑く、冬は厳しく冷え込むという、メリハリの強い気候が特徴です。
年ごとの降水量の変動も大きく、冬は雪に覆われる日が続くことも少なくありません。
一年を通しての気温差の大きさが、東欧らしさを形づくっています。
フランス、イギリス、オランダなどは、典型的な西岸海洋性気候のエリア。
年間を通して温暖で、雨が多いのが大きな特徴です。
海と偏西風のおかげで寒暖差は小さく、冬でも氷点下になる日は比較的少なめ。
霧やしとしと雨、どんよりした空が続く季節もあり、「曇りがちだけど過ごしやすい」地域と言えます。
ドイツ、オーストリア、チェコなどが属する中欧は、海の影響と内陸の影響が混ざり合う中間的な気候。
夏は30℃を超える日がある一方で、冬は雪が積もるほど冷え込むこともあります。
季節ごとの変化がはっきりしていて、気温も湿度も大きく上下。
感覚としては、「四季がくっきりしたヨーロッパ版の日本」に近い印象です。
スペイン、イタリア、ギリシャなどは、いわゆる地中海性気候の代表格。
夏はカラッと暑く、冬は比較的温暖という、わかりやすい特徴を持っています。
降水量は全体的に少なめで、特に夏はほとんど雨が降らない乾燥状態。
その代わり、冬に雨が集中する「冬雨型」のリズムが、この地域の暮らしを支えています。
ノルウェー、スウェーデン、フィンランドなどは、亜寒帯気候や寒帯気候に属する地域も多く、
冬の寒さと雪の多さは別格です。
一方で、夏は日照時間が非常に長く、フィンランドなどでは白夜が見られることも。
沿岸部は比較的穏やかですが、内陸に入るほど冷え込みが厳しくなる──そんなコントラストの強さが北欧の特徴です。
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ヨーロッパの国々の中には、本土から遠く離れた場所に海外領土を持っている国がいくつもあります。
そして当然ながら、そうした地域の気候は本土とはまったくの別物。
ヨーロッパ=温帯、というイメージだけでは語りきれない世界が、ここに広がっています。
海外領土に目を向けると、ヨーロッパ諸国の気候スケールの大きさがよくわかるんです。
| 海外領土名 | 気候帯 | 気候の特徴 |
|---|---|---|
| グアドループ | 熱帯雨林気候 | 一年を通して高温多湿で、雨季と乾季がはっきりしている。ハリケーンの影響を受けることもある。 |
| マルティニーク | 熱帯雨林気候 | 年間を通じて気温差が小さく、降水量が多い。火山地形による局地的な気候差が見られる。 |
| フランス領ギアナ | 熱帯雨林気候 | アマゾン流域に属し、非常に降水量が多い。高温多湿で、乾季でも蒸し暑さが続く。 |
| レユニオン | 熱帯モンスーン気候 | 貿易風の影響で東西の降水量差が大きい。山岳部では気温が低くなる。 |
| マヨット | 熱帯サバナ気候 | 雨季と乾季が明確で、比較的降水量は抑えめ。高温だが海風により過ごしやすい時期もある。 |
| ニューカレドニア | 亜熱帯湿潤気候 | 温暖で湿度が高く、夏に降水量が多い。台風の影響を受けることがある。 |
| フランス領ポリネシア | 熱帯海洋性気候 | 年較差が小さく温暖。海洋の影響で安定した気候だが、雨季にはスコールが多い。 |
| サンピエール島・ミクロン島 | 冷帯海洋性気候 | 冷涼で霧が多く、夏でも気温は低め。冬は強風と降雪が見られる。 |
フランスは地球上のほぼすべての地域に海外領土を持つ、かなり珍しい国です。
そのぶん、気候のバリエーションも圧倒的。
マルティニーク島やグアドループといったカリブ海の島々は熱帯雨林気候で、高温多湿。
南米に位置するフランス領ギアナも一年を通して蒸し暑く、まさに“熱帯のフランス”と呼びたくなる環境です。
| 海外領土名 | 気候帯 | 気候の特徴 |
|---|---|---|
| バミューダ諸島 | 亜熱帯湿潤気候 | 温暖で湿度が高く、夏は蒸し暑い。ハリケーンの影響を受けることがある。 |
| ケイマン諸島 | 熱帯サバナ気候 | 年間を通じて高温で、雨季と乾季が分かれる。比較的降水量は安定している。 |
| タークス・カイコス諸島 | 熱帯サバナ気候 | 乾燥気味で日照時間が長い。夏から秋にかけてハリケーンの影響を受けやすい。 |
| イギリス領ヴァージン諸島 | 熱帯海洋性気候 | 気温の年較差が小さく温暖。湿度が高く、夏季に降水量が増える。 |
| フォークランド諸島 | 冷帯海洋性気候 | 冷涼で風が非常に強い。年間を通して気温が低く、降水量は比較的少ない。 |
| ジブラルタル | 地中海性気候 | 夏は乾燥して暑く、冬は温暖で降水が多い。地中海沿岸特有の気候。 |
| セントヘレナ | 亜熱帯海洋性気候 | 温暖で湿度が安定している。標高差により島内で気候の違いが見られる。 |
| アクロティリおよびデケリア | 地中海性気候 | 夏は高温乾燥、冬は温暖で雨が多い。東地中海沿岸の典型的な気候。 |
イギリスの海外領土は世界各地に点在しています。
ジブラルタル(スペイン南端)、フォークランド諸島(南大西洋)、バミューダ諸島などが代表例。
これらの地域では、地中海性気候・海洋性気候・冷涼な亜熱帯性気候など、まさにバラバラ。
とくにバミューダは、ゴルフリゾートで知られる高温多湿の亜熱帯性気候として有名です。
| 海外領土名 | 気候帯 | 気候の特徴 |
|---|---|---|
| アルバ | 熱帯サバナ気候 | 年間を通して高温だが降水量は少なめ。乾燥した気候で、ハリケーンの直撃を受けにくい。 |
| キュラソー | 熱帯サバナ気候 | 乾燥傾向が強く、雨季と乾季がはっきりしている。強い日差しと海風が特徴。 |
| シント・マールテン | 熱帯海洋性気候 | 高温多湿で年較差が小さい。夏から秋にかけてハリケーンの影響を受けやすい。 |
| ボネール | 熱帯サバナ気候 | 非常に乾燥しており、降水量は少ない。安定した晴天が多く、強風が吹きやすい。 |
| サバ | 熱帯海洋性気候 | 高温多湿で降水量が多い。火山島で標高差があり、上部ほど涼しくなる。 |
| シント・ユースタティウス | 熱帯海洋性気候 | 温暖で湿度が高く、雨季にはスコールが多い。比較的安定した気候。 |
オランダもまた、カリブ海に海外領土を持つ国のひとつ。
アルバ島・キュラソー島・ボネール島などがそれにあたります。
これらの島々は、乾燥したステップ気候〜サバナ気候に近く、年間を通して温暖。 雨季と乾季がはっきり分かれるのが特徴で、ヨーロッパ本土とはまったく違う自然環境が広がっています。
| 海外領土名 | 気候帯 | 気候の特徴 |
|---|---|---|
| グリーンランド | 寒帯気候(極地気候) | 一年の大半が厳しい寒さに覆われ、内陸部は氷床に覆われている。沿岸部では短い夏に気温がわずかに上昇するが、降水量は少なく乾燥している。 |
| フェロー諸島 | 冷帯海洋性気候 | 年間を通じて冷涼で、気温差は小さい。降水量が多く、霧や強風が頻発する不安定な天候が特徴。 |
デンマークが統治するグリーンランドは、ヨーロッパ圏の中でも屈指の寒冷地域。
大部分がツンドラ気候や氷雪気候に分類され、夏でも平均気温は10℃以下という厳しさです。
その一方で、北極圏に近いため、夏には白夜が見られるという、極端な自然条件も併せ持っています。
| 海外領土名 | 気候帯 | 気候の特徴 |
|---|---|---|
| カナリア諸島 | 亜熱帯海洋性気候 | 年間を通して温暖で、年較差が小さい。貿易風の影響により湿潤な地域と乾燥した地域が島内で分かれる。 |
| セウタ | 地中海性気候 | 夏は乾燥して暑く、冬は比較的温暖で降水が多い。地中海と大西洋の影響を受ける。 |
| メリリャ | 地中海性気候 | 温暖で乾燥した夏と、穏やかな冬が特徴。降水量は少なめで、北アフリカ沿岸特有の気候。 |
スペインは、アフリカ沖に位置するカナリア諸島をはじめとした海外領土を持っています。
これらの島々は、温暖で乾燥したステップ気候や地中海性気候に属し、年間を通して過ごしやすいことで有名です。
また、アフリカ北岸にあるセウタやメリリャといった飛び地も、気候的には地中海性気候の範疇。
ヨーロッパの国でありながら、アフリカの空気を感じられる場所と言えるでしょう。
このように、ヨーロッパ本土の気候は地域によって大きく異なるだけでなく、海外領土を含めればまさに「世界中の気候を抱える大陸」と言っても過言ではないのです。国ごとに異なる“もうひとつの顔”にも注目してみると、ヨーロッパの気候はますます奥深く感じられますね。
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