古代ローマの平均寿命とは?

 

古代ローマ時代の平均寿命(平均余命)は20〜25歳程度であり、80歳前後が一般的になっている現代先進諸国と比べたら、かなり短かったことがわかります。これは古代ローマに限らず、古代世界においては当たり前のことでした。

 

 

短命の原因

古代世界において平均寿命が短くなる最大の原因は、医療の発達していない当時においては死産により乳幼児死亡率が高かったことにあります。さらに5歳以上成長した子供は、平均で40歳程度まで生きることが出来ましたが、それでも病気や疫病、災害や戦争における重傷で今ほど長く生きられる可能性は低かったのです。

 

乳幼児死亡率の高さ

乳幼児死亡率は非常に高く、新生児の約30%が1歳までに、50%が10歳までに亡くなっていました。これにより、全体の平均寿命は大幅に低くなりました。栄養不足、感染症、医療の未発達などが主要な原因でした。

 

感染症と疫病

古代ローマでは、疫病が頻繁に発生し、多くの人々の命を奪いました。特に都市部では、人口密度が高く、衛生環境が悪かったため、感染症が広がりやすかったのです。下水道や公衆浴場の整備が進んでいたとはいえ、現代の基準から見ると不十分であり、ペストやコレラなどの伝染病が猛威を振るいました。

 

戦争と暴力

ローマは頻繁に戦争を行っており、多くの若い男性が戦場で命を落としました。また、政治的な暴力や犯罪も多く、特に内乱やクーデターの時期には多くの犠牲者が出ました。戦争や暴力による死亡も平均寿命を下げる要因となりました。

 

労働と事故

古代ローマの労働環境は厳しく、建設現場や農業、鉱山での事故が多発しました。特に奴隷や貧困層の人々は過酷な労働条件下で働かされ、事故や労働による負傷が命に関わることが少なくありませんでした。

 

女性の寿命と出産

また女性の短命さも平均寿命を下げていました。子供が生まれても死ぬ確率が高いため、女性は一人当たり5〜6人の子供を生むことを強いられ、出産にともなう負担で多くの妊婦が死亡したのです。

 

出産の危険性

古代ローマでは、妊娠や出産に伴う医療技術が未発達であり、助産師の知識や技術も限られていました。そのため、出産時の合併症や感染症による死亡率が高かったのです。産後のケアも不十分であり、出産後に体力を回復できずに亡くなる女性も多くいました。

 

社会的役割と健康

女性は家庭内の多くの役割を担い、家事や育児、農作業などの重労働を行っていました。これらの負担が健康に悪影響を及ぼし、寿命を縮める原因となりました。さらに、女性は栄養状態も悪く、特に妊娠中や授乳期には栄養不足に陥りやすかったのです。

 

貧困層と奴隷の状況

貧困層や奴隷の女性は、特に過酷な生活を送っていました。過労や栄養失調、衛生環境の悪さが重なり、病気や感染症に対する抵抗力が弱かったため、早期に死亡するケースが多く見られました。

 

古代ローマの平均寿命が短かった理由には、乳幼児死亡率の高さ、感染症や疫病、戦争や暴力、過酷な労働環境、そして女性の出産リスクが挙げられます。これらの要因が重なり、全体的な平均寿命が20〜25歳程度となっていたのです。現代と比較すると非常に短い寿命ですが、これが当時の生活環境と医療技術の限界を反映しています。古代ローマの社会を理解する上で、この平均寿命の短さは重要な要素となっています。