
地中海の風景(油彩画)
太陽に照らされた丘陵や海岸線が描かれており、地中海性気候特有の乾いた雰囲気を醸し出している
出典:Photo by Unknown author / Wikimedia Commons Public domainより
地中海性気候といえば、カラッと晴れた青空に、乾いた空気が心地いい──そんなイメージを持つ人も多いでしょう。でも、そもそもなぜこの気候帯は「乾燥」しているのでしょうか?とくに夏場は、驚くほど雨が降らないことで知られています。今回は、地中海性気候の乾燥の理由を、気圧、海流、地形の3つの視点からわかりやすくかみ砕いて解説します。
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まず注目したいのは、大気の動きとその力関係。乾燥を生み出す背景には、「気圧」の働きが深く関わっています。
地中海性気候の地域は、夏になると亜熱帯高圧帯(アゾレス高気圧)の影響を強く受けます。この高気圧は下降気流をともなっていて、空気が下に押し下げられるため、雲ができにくくなります。雲がなければ当然、雨も降らない──これが地中海のカラ梅雨ならぬ“カラ夏”を生み出しているんですね。
雨が降るためには、空気が上昇して冷やされることで水蒸気が凝結し、雲にならなければなりません。でも、亜熱帯高圧帯のもとではそもそも空気が上昇しにくい。これが、雨の少なさの根本的な理由です。
次に見ていきたいのが海の流れ。じつは、地中海性気候の背後には、海流の働きもあるんです。
スペインやモロッコの沖を流れるカナリア海流は、冷たくて乾燥した海流です。こうした冷たい海流の上では、空気中の水蒸気が少なく、雲が発達しにくい傾向があります。地中海沿岸の乾いた空気感は、海の温度にも左右されているんですね。
さらに、地中海自体がほぼ閉ざされた内海であることも見逃せません。外洋のように水分供給が活発ではないため、空気中に蒸発する水分量も限定的。そのぶん降水の元となる水蒸気が不足しがちになります。
最後に見ていくのが、地形の影響です。山々の存在が、じつは雨雲にとって大きな“壁”になっているんです。
ヨーロッパの地中海沿岸──たとえばイタリア半島、フランス南部、バルカン半島などでは、内陸側に高い山脈(アルプス山脈など)が連なっています。これが外から湿った空気が入ってくるのをブロックし、雨雲が沿岸に届きにくくなるのです。
山を越えてきた風は、下り坂で温まりフェーン現象を引き起こすこともあります。これは乾燥した熱風となって地上に吹き下ろし、すでに少ない湿度をさらに下げてしまうんですね。
地中海性気候が乾燥しているのは、単に「暑いから」ではありません。気圧の働きで雲ができず、海からの水蒸気が少なく、さらに山が湿気をせき止める──そんな複数の要因が重なって、この独特のカラッとした空気感を生み出しているのです。
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