「イタリア料理といえばトマト」となったのはなぜ?

 

イタリア料理の食材といえば、トマトを思い浮かべる人は多いと思います。しかし、実はトマトがイタリア料理に使われるようになったのは、200年ほど前からであり、これは古代ローマ時代(紀元前8世紀〜紀元後5世紀)まで遡る、イタリア料理全体の歴史からみればかなり最近のことです。

 

 

南米からもたらされたトマト

トマトの原産地は南米であり、コロンブスの新大陸「発見」以降、大航海時代にヨーロッパにもたらされた食材です。そしてイタリアナポリにトマトが持ち込まれたのは、「発見」からしばらくたった16世紀中頃のことでした。

 

最初は観賞用で毒扱いされたトマト

しかし、ヨーロッパに伝わったばかりの頃、トマトは現在のように食用ではなく、貴族の観賞用の植物でした。これは、トマトが毒を持つベラドンナという植物に似ていたため、当時は同じように毒を持っていると信じられていたためです。

 

ようやく食用として広がるトマト

トマトを初めて食べたのは、ナポリで貴族の庭園の手入れをしていた庭師であったと言われ、ある時あまりの空腹から、我慢できずに食べてしまったそうです。しかしもちろん毒はないので、彼の空腹は一時的に満たされたことでしょう。

 

本格的な普及は18世紀以降

「毒がない、なおかつ美味しい」ということがわかると、南イタリアの気候や土壌がトマト栽培に適していたこともあり、18世紀頃には食用として広く普及していきます。

 

そして、トマトパスタやトマト煮込みなど多彩なトマト料理が生まれ人気を博し、かつては毒として忌避された食材が、イタリア料理の定番としての地位にまで昇り詰めたというわけです。