イタリアにおける大統領と首相の違い|どっちが偉い?

イタリアの大統領/首相の違い

大統領は国家元首として象徴的役割や仲裁機能を担い、首相は行政の長として政策遂行を主導する。両者は権限と役割が異なる。本ページでは、さらに任命方法や制度的関係などについても詳しく解説していく。

どっちが偉い?役割を比較してみようイタリアにおける大統領と首相の違い

G20で並ぶセルジョ・マッタレッラ(1941 - )とマリオ・ドラギ(1947 - )の写真

2021年のG20で並ぶマリオ・ドラギ首相(左)とセルジョ・マッタレッラ大統領(右)の写真
ローマでのG20関連行事で、国家元首と政府首班が並ぶ場面

出典:『Sergio Mattarella and Mario Draghi welcomed leaders to the G20 Rome Summit』-Photo by Presidenza della Repubblica/Wikimedia Commons Attribution only


 


大統領がテレビで演説する場面や、首相が議会で熱弁をふるう姿。
イタリアのニュースを見ていると、どちらも国のトップに見えてきます。
式典で先頭に立つ大統領、政治の最前線に立つ首相──結局どっちが上なの?と、つい考えてしまいますよね?


実はここが大きなポイントで、イタリアでは大統領と首相は「偉さ」で比べる関係ではありません役割がまったく違う二つのトップが並び立つ仕組みなんです。


本節ではこの「イタリアにおける大統領と首相の違い」というテーマを、大統領の立場・首相の役割・古代ローマから続く考え方──という3つの視点に分けて、ざっくり楽しく紐解いていきたいと思います!



大統領の役割──国家全体を見守る存在

大統領紋章が配されたイタリア大統領旗の図形

大統領紋章が配されたイタリア大統領旗
青地の中央にイタリア共和国の紋章が置かれた標章。
大統領の公的権威を示すシンボルとして用いられる。

出典:『Flag of the President of Italy』-Photo by Flanker/Wikimedia Commons Public domain


 


まずはイタリアの大統領から。
正式には共和国大統領と呼ばれ、国を象徴する立場にあります。


大統領は国民の直接選挙ではなく、国会議員と州代表による選挙で選ばれます。
任期は7年と長く、これは短期的な政争から距離を置くため。
その分、日々の政治バトルには深く入り込みません。


「まとめ役」としての大統領

大統領の重要な役目は、政治がスムーズに動くよう見守ること。
首相の任命、法律の公布、議会解散の承認など、要所要所で登場します。


特に力を発揮するのが、政党同士が対立して内閣が作れないとき。 誰を首相に指名すれば国が安定するかを考え、調整役として動くのが大統領です。


前に出すぎない理由

大統領は強い権限を持ちながら、あえて前に出ません。
それは「政治を動かす主役」ではなく、「土台を支える役」だから。


この距離感があることで、イタリアの政治は急激に傾きにくくなっています。
静かだけれど、いないと困る存在──それが大統領なんですね。


首相の役割──政治を実際に動かす責任者

イタリアの首相を示す閣僚評議会議長旗の図形

閣僚評議会議長旗
青地の中央に共和国紋章を配した旗。
イタリアの首相(閣僚評議会議長)の公的標章として掲げられる。

出典:『Flag of the Prime Minister of Italy』-Photo by Flanker/Wikimedia Commons CC BY-SA 3.0


 


次に首相です。
イタリアでは閣僚評議会議長と呼ばれ、政府のトップとして実務を担います。


法律案を出し、政策を決め、国会で説明する。
テレビでよく見る「政治の顔」は、ほとんどが首相です。


国会多数派の代表

首相は国会の多数派によって支えられています。
つまり、国会の信任を失えば、すぐに退陣する可能性がある立場。


その分、政治の現場で最も責任が重い役職でもあります。
景気、外交、社会制度──うまくいかなければ、批判を一身に受けるのが首相です。


動くけれど不安定

首相は国を動かす力を持つ一方で、地位は決して安泰ではありません。
イタリアでは内閣が頻繁に交代してきた歴史もあり、首相の椅子は常に揺れています。


だからこそ、首相はスピード感を持って動きます。
「今できること」を積み重ねていく役割なんです。


役割分担の背景──原点は古代ローマ

追放宣誓を行うブルトゥスとコッラティヌスの版画

追放宣誓を行う執政官ブルトゥスとコッラティヌスの版画
古代ローマ共和政の頂点を「二人」で担い、権力分散を図った執政官制を象徴する場面。
現代イタリアに通づる、並立と相互牽制で、独走や専制化を抑える発想があった。

出典:『De eerste consuls zweren de Tarquinii voor eeuwig uit Rome te verbannen』-Photo by Rijksmuseum/Wikimedia Commons CC0


 


現代イタリア政治に見られる、大統領と首相が並び立つ二重構造。
実はこれ、ちょっと不思議に見えて、歴史をたどると「ああ、なるほど」と腑に落ちる仕組みなんです。
そのヒントになるのが、ずばり古代ローマ


古代ローマ共和国では、権力を一人に集中させないことが何よりも大切にされていました。
執政官、元老院、民会──それぞれが役割を分担し、互いにブレーキをかけ合う構造。
強力なリーダーが生まれることそのものを、ローマ人は本能的に警戒していたわけです。


「一人に任せない」伝統

ローマ人にとって、「強すぎる権力」は危険そのもの。
だからこそ、決定する立場と、見張る立場をあえて分けるという発想が育っていきました。
任せきりにしない。必ず誰かがチェックする。
この慎重さこそ、ローマ政治の大きな特徴だったんですね。


そしてこの考え方、実は現代イタリアにもちゃんと残っています。


  • 大統領は国全体の安定を見守る存在
  • 首相は、政策を実行し、日々の政治を前に進める現場担当


役割を分けることで、どちらかが暴走しないよう、自然とバランスが取られる仕組みになっています。


どっちが偉い?への答え

ここまで見てくると、答えはだいぶ見えてきます。
大統領と首相は、上下関係で優劣をつける存在ではありません。


前に立って政治を動かす首相。
少し距離を取り、全体の流れを見守る大統領。
役割は違えど、どちらも欠かせない存在です。


どちらか一方だけでは、政治はどうしても偏ってしまう。
だからこそ、あえて分ける。任せきりにしない。
古代ローマから続く「分けて守る」という発想が、姿を変えながら、今のイタリア政治にも静かに息づいているのです。


イタリアの大統領と首相は、上下関係で比べる存在ではありません。
大統領は国家全体を見守る安定装置であり、首相は政治を実際に動かす実務の責任者。
役割を分けることで国を支えるという考え方は、古代ローマから続くイタリアらしい伝統です。


「どっちが偉い?」と感じたら、「何を担当しているか」を見る。
そう考えると、この二人の関係がぐっと分かりやすくなりますよ。