人類のベッドの歴史は長く、文明が成立する前の石器時代から葉や草を利用したベッドに相当する寝具が使われていました。しかし現代のような木組みのベッドの原型ができたのは古代エジプトとされています。
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古代ローマにおいてベッドは睡眠だけでなく、日中は食事や読書をするための長椅子としても利用されていました。ローマ帝政期になると、「キュビキュルム」と呼ばれる寝室のような部屋も登場しています。ローマ人の生活は非常に快適さを追求しており、ベッドもその一環として進化していました。
古代ローマにはいくつかのベッドの種類が存在しました。代表的なものには、寝るための「レクトゥス」(lectus)、食事や会話のために用いられる「レクトゥス・トリクラリス」(lectus tricliniaris)、さらに日中のリラックスのために使われる「レクトゥス・ディウルヌス」(lectus diurnus)などがあります。
ベッドには布の袋の中に羊毛や葦、藁を入れたものが使われ、羽毛のベッドもありましたが高級だったので一部の裕福な家庭に限られました。木材を用いたベッドフレームは、装飾が施されることもあり、美しい彫刻やインレイが施されることもありました。ベッドのフレームには金属製の装飾も使われ、特に裕福な家庭では金や銀が使用されることもありました。
マットレスは、藁や羊毛、羽毛などを詰めた布袋が一般的でしたが、特に裕福な家庭ではより柔らかく快適な羽毛を使ったマットレスが好まれました。寝具としては、羊毛の毛布やリネンのシーツが使われていました。冬季には暖かい毛皮の毛布も使用されました。
古代ローマにおけるベッドは、単なる寝具以上の意味を持っていました。特に食事や社交の場としての役割が大きく、ベッドでの食事は裕福な家庭の象徴でもありました。ベッドで食事を取る際には、トリクリニウム(食堂)という専用の部屋があり、ここで客人をもてなすことが一般的でした。
寝室であるキュビキュルムは、美しい壁画やモザイクで装飾されることが一般的でした。これにより、寝室は単なる寝るための場所ではなく、芸術と美の空間としても機能していました。裕福な家庭では、寝室に美しい家具や彫刻が置かれ、居心地の良い空間が作り出されていました。
古代ローマのベッドは、単なる寝具以上の多様な役割を持っていました。日中の活動の場としても利用され、素材や装飾にこだわった快適さと美しさを追求したものだったのです。ローマ人の生活の中で、ベッドは重要な位置を占めており、社会的地位や富を示す象徴でもありました。
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