
ロンドンスモッグ時の市街の様子
出典(撮影者:N T Stobbs 提供:CC BY-SA 2.0)
産業革命は人類にとって大きな飛躍でした。モノが大量に作れるようになり、生活は便利に、経済はぐんと成長していきます。でもその一方で、気づけば空気はよどみ、水は汚れ、大地はボロボロに…。つまり、産業革命は「環境問題の始まり」でもあったんですね。今回は、その具体的な問題をいくつかピックアップして、何がどう悪化していったのかをわかりやすくかみ砕いて解説していきます。
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まず真っ先に深刻化したのが、空気の汚染。都市の空には、もはや青さも透明さもなくなっていきました。
産業革命の原動力は蒸気機関、そしてその燃料は石炭。工場や列車、船から出る黒煙は、街の空気をどんどん汚していきました。19世紀のロンドンでは、スモッグによって昼間でも街が真っ暗になるほどだったんです。
工場の周辺に住んでいた労働者たちは、煤煙や有毒ガスにさらされて暮らしていました。慢性的な呼吸器の病気や、寿命の短さが社会問題となり、都市の衛生環境の見直しが叫ばれるようになります。
川や湖といった水辺の環境も、産業の発展によってガラッと変わってしまいました。
繊維・化学・金属などの工場からは、汚水や有害な薬品がそのまま川へと流されていました。魚は死に、農業にも悪影響。飲み水すら汚染されるようになっていきます。
産業都市では人口も一気に増加。下水道が整っていないまま人が密集したことで、生活排水や汚物が川に垂れ流しの状態に。疫病の流行や飲料水不足が深刻化していきました。
工業化と人口増加によって、大地──つまり森や畑、鉱山などの環境も大きく変わっていきます。
燃料としての木材需要、農地や工場用地の拡大のために、大規模な森林破壊が進みました。結果、野生動物のすみかが失われたり、土壌の保水力が低下して洪水が増えるといった影響が出てきます。
鉄や石炭などの資源を掘りまくった結果、鉱山周辺の土地は荒廃。酸性雨や有毒物質による土壌汚染が広がり、農業も立ち行かなくなる地域が出てきました。
こうして見ると、産業革命って確かに便利な世界の扉を開いたけど、その影には“環境への代償”があったんですね。空気・水・大地、あらゆる自然が一気に痛み始めたのがこの時代。つまり、現代の環境問題のルーツは、ここにあったわけなのです。
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