
地中海性気候域の分布図
ヨーロッパ南部沿岸を中心とした黄緑色の領域が地中海性気候域
出典:Photo by LordToran / Wikimedia Commons CC BY-SA 3.0より
地中海性気候──名前の通り、地中海沿岸を中心に見られるこの気候帯は、「夏はカラッと晴れて暑く、冬はほどよく雨が降って温暖」という、とても過ごしやすい気候として知られています。では、なぜ地中海周辺はこんなに「暖かくて乾燥した夏、そして穏やかな冬」になるのでしょうか?今回は、この不思議な気候の仕組みと、それがもたらす風土の特徴をわかりやすくかみ砕いて解説します。
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まずは、この気候がどんな特徴をもっているのか、気温と降水の動きから見ていきましょう。
地中海性気候の最大の特徴は、夏に雨がほとんど降らないという点です。気温は30℃前後まで上がる日もありますが、湿度が低いため比較的過ごしやすいのがポイント。空気はカラッとしていて、日差しは強いけれど不快感はあまりありません。
冬は日本のような寒さにはならず、平均気温は5〜10℃前後。この時期は前線が地中海周辺を通るようになり、しとしととした雨が降るようになります。ただし積雪は非常にまれで、氷点下になることもほとんどない地域が多いのです。
では、地中海性気候がなぜこんなにも暖かいのか──その理由を気圧と海流の観点からひも解いてみましょう。
夏のあいだ、地中海地域には亜熱帯高圧帯(アゾレス高気圧)が張り出します。この高気圧は下降気流をともない、雲ができにくいため、空は晴れ続け、雨がほとんど降らなくなるのです。これが夏の乾燥を生み出す主な要因です。
地中海は小さな海にしては非常に温暖です。これは、大西洋から流れ込む暖流(カナリア海流など)と、海に囲まれた閉鎖性の地形によって、水温が下がりにくいから。冬になっても海が蓄えた熱が大気を温め、沿岸部の寒さを和らげてくれます。
地中海性気候が成り立つためには、もうひとつ重要な要素があります。それが「地形と風の動き」です。
多くの地中海沿岸地域では、内陸側に山脈(アルプス、ピレネーなど)がそびえており、海側の湿った空気をブロックする働きをしています。これにより、海風の影響が沿岸部に集中し、内陸とは違う温暖な気候が保たれているのです。
冬になると偏西風(西からの風)が地中海地域に湿った空気を運び込みます。これが冬の降水の原因であり、農作物にとっては重要な水資源ともなるのです。つまり、地中海性気候の雨は「冬のプレゼント」なんですね。
地中海性気候が暖かいのは、単に南にあるからではありません。気圧帯の位置、海の性質、山と風の働き──これらが絶妙に組み合わさることで、「暖かくて快適」な風土が生まれているんです。だからこそ、この地域には古代から人びとの暮らしが息づき、文化が花開いてきたのですね。
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