背後の一突き

1919年に描かれたプロパガンダイラスト。ナイフをもったユダヤ人が兵士を刺そうとする図。

 

背後の一突き」とは、「第一次世界大戦における敗戦は、敵に敗れたのではなく、国内のユダヤ人・社会主義者・平和主義者などの裏切りのせいで敗けた」とする、戦間期ナチスが国内の反ユダヤ感情を煽り、勢力拡大をするために利用していた考え方です。

思想の影響

背後の一突き論自体は、第一次世界大戦末期、戦況が悪化するにともない、戦争を主導した軍部が左派に責任転嫁する目的で出てきましたが、戦後、世界恐慌による不況やヴェルサイユ条約による戦後賠償に苦しむようになると、より多くの層に受け入れられ、ワイマール体制の崩壊へ繋がっていきました。

 

さらに、この「背後の一突き」の理論は、特にユダヤ人や左翼の存在を悪魔化し、その結果、彼らを社会の敵と見なすナチスの反ユダヤ主義や反共主義にとって便利なツールとなりました。これにより、社会の混乱と不満が一部の特定の集団に向けられることで、ヒトラーとナチスは彼らの政治的アジェンダを前進させることができたのです。

 

このように、「背後の一突き」の理論は、ユダヤ人や左翼を社会の問題の原因としてスケープゴートにするという、ナチスの戦略的なプロパガンダの一部となりました。そして、このプロパガンダは、第二次世界大戦へと続く政治的な緊張と不安を増幅させ、結果的には恐ろしいホロコーストへと繋がる道筋を作ったことは忘れてはならないでしょう。

 

「背後の一突き」の理論は、世論を操作し、政治的な支持を得るために、真実を曲げるか無視するという危険なパターンを示しています。これは、現代でも重要な教訓となり、メディアの役割やプロパガンダの影響力について深く考えるきっかけとなると思います。