
テューリンゲンの森(ドイツ)のブナ林
西岸海洋性気候のもとに広がる常緑広葉樹の森
出典:Photo by Metilsteiner / Wikimedia Commons CC BY-SA 3.0より
ヨーロッパの西側に広がる西岸海洋性気候の地域は、「温暖で湿潤」という安定した気候が魅力。その気候に育まれてきた自然環境もまた、独特の色彩を持っています。とくに植生──つまり植物の生え方やその種類には、この気候ならではの特徴がよく表れているんです。今回は、西岸海洋性気候における植生の世界をのぞいてみましょう。
|
|
|
|
まずは、気候と直結している「森の姿」から見てみましょう。
西岸海洋性気候の地域では、常緑広葉樹の森がよく見られます。たとえばブナやナラ、シイ、カシといった木々が代表格で、これらは年間を通じて葉を落とさず、濃い緑の景観を保ちます。温暖で湿った気候が、葉の維持にちょうどいい環境をつくってくれているんですね。
また、常緑樹ばかりでなく、落葉広葉樹──たとえばカエデやハンノキ、トネリコなんかも多く見られます。とくに標高が少し高い場所では、四季を感じる紅葉や新緑の森が楽しめるのも特徴のひとつなんです。
森だけじゃなく、ひらけた草地もまた、この気候の恩恵を受けた植生です。
温暖で降水の多い気候は、草が一年中よく育つ環境でもあります。イギリスやフランス西部では、牛や羊を放牧するための牧草地がどこまでも広がり、それがまた美しい田園風景を生み出しているんですね。
こうした草地は自然のままというより、人の手によって整えられてきたものが多いです。つまり半自然的な植生。何世紀にもわたって続けられてきた放牧や刈り取りの積み重ねが、草地の多様性を保っているわけです。
しっとりした気候が育むもうひとつの植生が、湿地や河川周辺の植物たちです。
雨の多さや水はけの悪さから、低湿地も各地に点在しています。そこにはヨシやスゲ、ミズゴケといった湿地特有の植物が繁茂し、小動物たちの生息地にもなっています。とりわけ湿地保護区では、こうした植物が生態系の核となっているんです。
河川や小川のそばには、ハンノキ林やヤナギ類など、水を好む樹木がまとまって育っています。これらは増水や湿気にも強く、まさにこの気候の中で進化してきた“プロフェッショナル”な植生と言えるでしょう。
西岸海洋性気候の植生は、穏やかな気温とたっぷりの雨という自然条件にぴったり適応してきたものばかり。豊かな森、広がる草地、しっとりした湿地──そのどれもが、この気候のやさしさと生命力を映し出しているんですね。
|
|
|
|