十字軍の歴史的意義とは?

11世紀から13世紀(広義には 11〜15世紀中頃)にかけ複数回にわたり行われた十字軍遠征は、イスラム教徒に奪われた聖地・エルサレム奪還を名目に行われた、キリスト教カトリック勢力の東方軍事遠征軍です。

 

ローマ教皇の呼びかけで8回以上にわたり結成、東欧および中近東へ向けて派兵されましたが、第1回以外はほぼ失敗に終わっています。しかしその後の出来事を俯瞰してみると、東方貿易の活発化、ルネサンス文化の開花、封建制の崩壊に繋がるなど、明確な歴史的意義が存在するのです。

 

このページの目次

 

東方貿易の活性化

十字軍遠征により、東方オリエント世界との交易路が開かれ、イタリアの港湾都市(ヴェネツィアジェノヴァなど)を中心にヨーロッパの商業が繁栄しました。この商業的繁栄が基礎となり、14世紀以降ルネサンス文化が開化し、のちの大航海時代産業革命の原動力となる様々な技術革新が起こったのです。

 


東方由来の物産で、特にヨーロッパ人に好評を博したのが香辛料です。香辛料により、日がたって悪くなった肉でも美味しく食べられるようになり、ヨーロッパ人にとって香辛料は欠かせないものとなりました。この香辛料貿易は、15世紀以降、東方にオスマン帝国が立ちはだかったことで衰退しますが、大航海時代が始まり、アジアへの西回り航路が開拓されたことで、再興を遂げることとなります。

 

封建制の崩壊

十字軍遠征は第一回以外は失敗続きで、呼びかけた教皇や諸侯の権威を大きく失墜させる結果となりました。その結果相対的に王権が伸長し、商業的繁栄により領主に依存しない有力市民も増えたことで、封建領主が没落し、封建社会は崩壊に向かっていったのです。

 

十字軍遠征は、主権国家体制や近代市民社会成立のきっかけをつくったともいえます。