
ヨーロッパ南部に位置するイタリアは、アルプスから地中海まで変化に富んだ自然環境を持つ国。こうした多様な風土のもとで、じつにさまざまな動物たちが暮らしてきました。山岳に生きるアイベックス、丘陵を駆けるイノシシ、湿地を彩る水鳥たち──それぞれの動物には、この国の風景や文化との深いつながりがあるのです。このページでは、そんなイタリアの動物たちを「自然」「文化」「代表動物」という3つの視点から、わかりやすくかみ砕いて紹介していきます。
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イタリアの地形と気候が、どんな動物の暮らしを育んでいるのかを見ていきましょう。
北部のアルプス山脈と縦断するアペニン山脈は、イタリアの動物分布を大きく左右しています。標高の高い地域には高山性の哺乳類が生息し、岩場を好むアイベックス(野生のヤギ)やシャモアのような山岳動物が見られます。
中部から南部にかけては、温暖で乾燥する地中海性気候が広がっています。この気候に適応したイノシシやキツネ、さらにはウサギ、爬虫類などが人里近くでも見られ、時には農地に出没することもあるんです。
ポー川流域やヴェネトのラグーン、トスカーナの干潟などには湿地帯が点在し、コウノトリやカモ、フラミンゴといった渡り鳥が羽を休めます。イタリアはヨーロッパとアフリカを結ぶルートに位置していて、渡りの重要な中継地点となっているのです。
動物は、イタリアの歴史や暮らしのなかでも、深く息づいてきた存在です。
古代ローマ時代には、猛獣と剣闘士の戦いが娯楽として行われていました。ライオン、ヒョウ、クマなどがコロッセオに持ち込まれた記録もあり、当時の人びとの動物観は、今とはかなり異なっていたといえます。
イタリアの農村では、牛・豚・羊・ヤギといった家畜が、食と生活の両面で欠かせない存在でした。今も各地で伝統的な放牧が行われており、チーズや生ハムなどの地域ブランドに深く関わっています。
近年では、イタリア国内でも野生動物保護への意識が高まり、国立公園の整備や狩猟制限などが進められています。また、都市部では野良猫の保護活動が活発で、ローマでは遺跡に暮らす猫たちが“観光名物”になっているほどなんです。
それでは、イタリアの自然を代表する、印象的な動物たちを紹介していきましょう。
アルプス山脈に生息するアイベックス
長く湾曲した角と岩場を軽やかに移動する脚力が特徴の山岳の王者。アルプス地域ではかつて絶滅寸前でしたが、保護活動によって回復し、今ではグラン・パラディーゾ国立公園などでその姿を見ることができます。イタリア北部の自然の象徴ともいえる存在です。
山地から農地、さらには都市郊外にまで出没するほどの適応力を持つ野生動物。イタリアではトスカーナ地方の郷土料理に欠かせない存在でもあり、狩猟対象とされています。ただし個体数が増えすぎて問題視されるケースもあるため、バランスの取れた管理が求められています。
とくにサルデーニャ島やプーリア州などの沿岸湿地に現れるロゼフラミンゴの群れは、観光客にも人気の光景。ピンクの羽をひらめかせて浅瀬を歩く姿は、まるで絵画のよう。イタリアのもう一つの顔=湿地の国を象徴する存在です。
アルプスの峻険な山から、地中海のラグーンまで──イタリアの自然は驚くほどバリエーション豊か。それぞれの環境に根ざして生きる動物たちが、この国の多様性を物語っているようですね。
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