
ヨーロッパの街角を歩いていると、石造りの外壁や木組みの家並みに思わず見とれてしまうこと、ありますよね。でもその建物の中ってどうなってるんだろう? と気になったことはありませんか? 実はヨーロッパの民家は、外から見える美しさだけでなく、内装や間取りにもその土地の歴史や暮らしの知恵が詰まっているんです。今回はそんなヨーロッパ住宅の“内側”に迫ってみましょう。
|
|
|
|
地域や国によって多少の違いはありますが、ヨーロッパの住宅には共通する“あたたかみ”と“機能美”があります。その理由を内装のポイントから見ていきましょう。
梁(はり)がむき出しになった天井、石造りの壁、重厚な床板──ヨーロッパの家では自然素材がふんだんに使われています。とくに北ヨーロッパでは断熱性の高い木材が、南ヨーロッパでは熱を逃がす石材が多く使われていて、地域の気候に合わせて設計されているんですね。
特に中部~北部の住宅では、暖炉(ファイヤープレイス)が中心的な存在。現代ではインテリア化していることも多いですが、もともとは家族全員が集う暖かな“心臓部”でした。レンガや石で作られた煙突付きの暖炉は、部屋のデザインそのものを引き締めるアクセントでもあります。
ヨーロッパの住宅のキッチンには収納スペースがたくさんあります。対面キッチンよりも、壁付けキッチンや独立型のキッチンが多いです。また驚きなのが、洗濯機が設置されていることが多いということです。これは上で解説したことにも関連しますが、ヨーロッパでは古来より修復を繰り返した築何百年という家に住んでいることも多いので、昔の家の構造的に水回りはキッチンにしかなく、必然的に洗濯機はキッチンに置くことになるからです。
ヨーロッパのキッチンのシンクは2つに分れていることが多いです。水が貴重なヨーロッパでは、水を流したまま食器を洗うことはしません。作り置きしておいた片方のシンクの洗剤液で食器をごしごし洗い、もう一方のシンクですすぐ、という使い方が一般的なのです。とはいえ最近は食洗機が主流になり、こういった洗い方をする家庭は減ってきています。2つになっているシンクは1つ分の大きさが小さいので、鍋など大きなものを洗うのが難しいという欠点もありますよね。
ヨーロッパは親戚や友人を招いてパーティをすることが多いので、食事専用の部屋としてダイニングルームがキッチンとは独立している場合が多いです。日本でも文明開化以後、このスタイルを模倣した西洋風住宅が増えました。
ヨーロッパは二重窓や三十窓の家が多いです。窓に厚みがあるので、断熱性や防犯性、防音性などに優れていますね。断熱効果で結露も出来にくいので、カビが生えにくく、住宅が長持ちします。日本でも二重窓を採用する家は増加傾向にありますが、普及率はまだまだ20%程度と低いです。
一見どの家も似ているようでいて、間取りの考え方はけっこう多様。でも「合理的に」「季節に合わせて」という思想が根底にはしっかりあるんです。
ヨーロッパの民家は上下階で生活空間を分けるのが一般的。たとえば1階にキッチンやリビングがあって、2階に寝室やバスルームを配置するスタイル。これは暖気が上にこもる性質を活かしたつくりで、寒さ対策にもなっていたんですね。
日本の“襖で仕切る”スタイルとは違い、明確に区切られた個室が基本。ドアをしっかり閉める文化は、プライバシー重視と断熱性の両立のため。開けっ放しにせず、部屋ごとに温度管理をすることが、ヨーロッパの暮らしの知恵でした。
こうした民家の特徴は、ただの設計上の工夫ではなく、長い歴史と文化の中で形成されてきたもの。社会や技術の変化がそのまま住宅に反映されてきたんです。
中世の民家は、都市の中にひしめき合うように建てられていました。石造りの1階と、木骨組の上階(ハーフティンバー)を組み合わせた家が多く、防火や防犯の観点からも堅牢さが求められていました。店舗と住居が一体化した「商家」スタイルも多く見られます。
産業革命後になると、水道・ガス・暖房設備が整い、住宅はより快適で衛生的に。室内には絨毯や壁紙、装飾モールディングが用いられるようになり、「居心地のよさ」を追求する時代に突入します。郊外の一戸建て文化もこの頃から発達し、家庭生活の中心がしっかりと“家の中”に移っていくのです。
ヨーロッパの民家には、その土地の気候・文化・歴史がぎゅっと詰まっているんですね。ただの建物じゃなくて、人々の暮らし方や価値観そのものが、壁や床に刻まれている──そんな感覚になるのです。
|
|
|
|