家の造りには、その国・地域の地理・気候・文化的な影響がよく表れており、イタリアの場合はとくにその傾向が顕著といえると思います。ここではイタリアの家にみられる特徴を紹介しています。
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イタリアの住宅史は、古代から現代に至るまで、社会的地位や経済的能力による住まいの格差が顕著に表れてきました。
古代ローマ時代には、貴族や富裕層は豪華なヴィラや大邸宅に住み、平民はインスラ(集合住宅)や簡素な家屋に暮らしていました。これらのインスラは多層で密集しており、生活環境はあまり良くなかったとされています。
中世に入ると、都市部では貴族や富裕な商人が建てる堅固な石造りの家や、塔のように高い家(特にフィレンツェやサン・ジミニャーノで有名)が登場します。これらは防御機能を兼ね備えており、地位や富の象徴となりました。一方、平民は依然として狭小な空間での生活を強いられていました。
ルネサンス期には、芸術と文化の発展に伴い、建築様式も大きく変化します。この時代には、パラッツォ(大邸宅)が貴族や富裕層の間で流行し、彼らの優雅で洗練された生活様式が反映されました。一方で、平民の住宅は依然として基本的な機能にとどまり、生活の質の格差は大きかったです。
近代に入ると、産業革命や都市化の進展により、住宅事情にも変化が生じます。貴族の没落と中産階級の台頭により、住宅のスタイルはより実用的かつ快適な方向へと移行しました。しかし、都市部では住宅の密集とスラム化が進み、社会問題となりました。
現代イタリアでは、住宅は個人の趣味や経済力を反映する多様なスタイルで展開しています。郊外にはモダンな住宅やアパートが見られる一方で、歴史的な都市中心部では伝統的な建築様式が保持されています。社会経済的格差は依然存在しますが、住宅政策や都市計画により、生活環境の改善が図られています。
イタリアの住宅史は、時代の変遷と共に、平民から貴族までの生活様式の変化を映し出す鏡のような存在です。古代から現代に至るまでの家の変遷は、社会の動きと密接に関連しており、イタリアの歴史と文化を理解する上で重要な要素となっています。
イタリアには耐久性に優れる石造りの家が多く、築数百年という古民家が珍しくありません。(日本の伝統的な木材建築の寿命はせいぜい30年)その為、イタリアでは「土地」よりも、こういった歴史ある「家」に価値が置かれ、個人の家が国家の保護下に置かれたり、1つの家に何代にもわたって住み続けるというケースがよく見られます。
イタリアには「トゥルッリ」と呼ばれる伝統家屋があります。トゥルッリはとんがり屋根の石の家で、ユネスコの世界遺産にも登録されている。トゥルッリは主に南イタリアプーリア州・アルベロベッロでみられる家で、前8世紀に古代クレタ文明よりもたらされたといわれています。似た家はアルベロベッロ以外でも、地中海沿岸のいくつかの地域で見られます。
日本に限らず、多くの国々では家を「プライベートの場」と考える傾向があるのに対し、イタリア人は「社交の場」と考える傾向があります。もちろん個人差はあるものの、イタリアの家は、いつ人を招いてもいいように、絵画や装飾品で飾り、余計な物を置かず整理され、スペースを広くとった間取りになっていることが多いです。招いた来客が家の中を自由に満喫できるように、全ての部屋が綺麗に片付けてあるのもイタリアならではです。
イタリア半島は歴史的に、多方面から文化の流入があったため、エトルリア建築、ローマ建築、ビザンチン建築、ロマネスク建築、ルネサンス建築など非常に幅広く多様な建築様式が生まれました。そのため現在でもイタリア諸都市には、ピサ大聖堂(ロマネスク様式)、ミラノ大聖堂(ゴシック様式)、サンジョルジョ・マッジョーレ教会(ルネサンス様式)、サンタ・マリア・デッラ・ヴィットリア教会(バロック様式)など、時代を象徴する有名建築物が多く保全されています。
イタリアの家造りとその建築様式は、地理、歴史、文化の豊かな融合を映し出し、エトルリアやローマの影響からルネサンス、バロックに至るまで、多様な建築様式はイタリアの歴史的な変遷を物語っています。古民家やトゥルッリのような伝統家屋から、華やかな宗教建築まで、イタリアの建物はその地域ごとの特色や時代背景を色濃く反映しており、訪れる人々にイタリアの歴史と文化の豊かさを感じさせてくれることでしょう。
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