
南欧の陽光をたっぷり浴びた壁、オレンジ色の屋根瓦、アイアンのバルコニーに咲く花々──イタリアの家って、なんだか絵になるんですよね。でもその美しさ、単なる見た目だけじゃありません。気候、歴史、地域文化が深く絡み合って、家の形や内装のスタイルがつくられているんです。そしてイタリアには「トゥルッリ」なんていう一風変わった伝統家屋も…? 今回はそんなイタリアの住宅の魅力と成り立ちをまるっと紹介していきます!
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イタリアの家には「地中海スタイル」と呼ばれる共通の美的センスがありますが、地域によってその顔つきにはバリエーションも。まずはその基本的な特徴を見ていきましょう。
イタリアの家は石造りの構造に白やクリーム色の漆喰を塗った外壁が多く、陽光を反射して室内を涼しく保つ役割も果たしています。素材はその土地でとれる石を使っているため、トスカーナでは赤みがかった石、シチリアでは溶岩石など、地域ごとに表情が変わります。
オレンジ色の半筒型テラコッタ瓦は、イタリア家屋の“顔”ともいえるアイテム。曲面があることで雨水がスムーズに流れ、見た目にもやわらかく温かい印象を与えます。さらに傾斜の緩やかな屋根は、地震にもある程度強いという実用性も。
イタリアの家には、外とつながる空間がよく設けられます。中庭(コルティーレ)、テラス(テッラッツァ)、バルコニー(バルコーネ)など、外で食事したり、日光浴したり、近所の人とおしゃべりしたり…という生活の延長としての「屋外スペース」がとても重要なんです。
イタリア住宅のデザインや機能性には、長い歴史が影響しています。古代ローマから中世、ルネサンスを経て、民家のスタイルも少しずつ変化してきたのです。
ドムス(富裕層の戸建て)やインスラ(集合住宅)など、古代ローマ時代にはすでに都市住宅の原型が存在していました。中庭(アトリウム)を中心としたドムスの設計思想は、後のイタリア住宅にも引き継がれています。
都市部では、商人たちが縦に長い家を建て、1階は店舗、上階は住居という“商家スタイル”が定番になりました。一方で貴族階級は広い敷地にパラッツォ(宮殿風の屋敷)を構え、庭や装飾にこだわった豪華な暮らしを営んでいたのです。
第二次世界大戦後は、都市化とモダニズムの影響で集合住宅やアパートメントが増加。ただし今でもファサードは地域の伝統色に合わせるなど、歴史的景観との調和が求められる場面も多く、古い街並みの保存意識は非常に高いのが特徴です。
イタリア南部・プーリア州州に行くと、まるで童話に出てきそうなとんがり帽子の家が並ぶ光景に出くわします。これが「トゥルッリ(Trulli)」と呼ばれる伝統的な住宅。とにかく独特で、観光名所にもなっているんです。
トゥルッリの最大の特徴は、セメントを使わず石を積み上げてつくられたドーム型の屋根。その技法は古代から伝わるもので、断熱性にすぐれ、夏は涼しく冬は暖かく過ごせるんです。屋根のてっぺんには謎めいたシンボルが描かれることも多く、魔除けや信仰的な意味が込められているとされます。
トゥルッリは一説によれば、「いつでも取り壊せる簡易な家」という建前で税金をごまかすために建てられたという逸話もあります。石をただ積むだけの構造は、簡単に壊して「建物ではない」と言い張れる…そんなユーモラスな知恵も、この独特な家の背景にあるのかもしれません。
イタリアの家って、見た目の美しさだけじゃなく、暑さ・寒さ・風通しなどへの知恵が詰まっていたんですね。とくにトゥルッリは、ちょっと変わってるけど実用的で、歴史もあって…まさに“生きた文化財”といえる存在なのです。
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