ヨーロッパに降る「赤い雪」の正体|サハラ砂漠が発生源か

「赤い雪」の発生源サハラ砂漠

 

真っ白な雪景色に、突然あらわれる赤みがかった雪面──それはまるで血が混じったかのような、不気味な色合い。でもこれ、ホラーでも核汚染でもありません。じつはこの「赤い雪」、ヨーロッパのとくにフランスやスイスなどで春先に見られる自然現象なんです。見た目のインパクトから「体に悪いのでは?」と心配になる人もいますが、実際にはアフリカ大陸からやってきた、ある意外な“お客さん”が原因なんですよ。今回はそんな赤い雪の正体に迫りながら、サハラ砂漠とヨーロッパがつながっている驚きの自然現象を解き明かしていきます。

 

 

赤い雪の正体とは

まずは気になる「赤い雪」の正体から。なぜ雪が赤く染まって見えるのでしょうか?

 

雪に混じった赤い砂粒

赤い雪といっても、実際に雪が赤く変質しているわけではありません。正体は空気中に舞った赤土が雪に混じることで色づいて見えるというもの。空から降ってくる途中で砂粒が雪にくっつく、または積もった雪の上に赤土が落ちることで、赤みがかった雪景色が生まれるんですね。

 

放射性物質などは一切なし

見た目がちょっと異様なため、過去の「黒い雨」などを思い出して不安になる人もいるかもしれません。でも安心してください。赤い雪に含まれる砂は自然由来のもので、有害な成分は含まれていません。むしろ地球規模の大気循環を感じられる、珍しい現象なんです。

 

砂の出どころはサハラ砂漠

じゃあ、その赤い砂粒はどこからやってくるのか?ヒントは“アフリカ最大の砂漠”にありました。

 

サハラ砂漠の赤土が原因

赤い雪のもととなっているのは、アフリカ北部に広がるサハラ砂漠。その面積はなんと約1万平方キロメートルを超え、アメリカ合衆国本土とほぼ同じ広さとも言われています。ここでは、風化によって生まれた赤みがかった細かな砂粒が、乾いた大地から空へと舞い上がりやすい状態になっているんです。

 

高温差と乾燥が砂を細かくする

サハラでは昼は50℃以上、夜は氷点下まで冷え込むという激しい寒暖差があります。この気温差が地表の岩や土をどんどん風化させ、粒子の細かい赤土を大量に生み出している。そして降水量も少ないため、砂が舞いやすい環境が年中続いているのです。

 

空を越えてヨーロッパへ

では、なぜアフリカの砂がはるばるヨーロッパまで飛んでくるのでしょうか?

 

南風にのって空を旅する砂

サハラ砂漠から舞い上がった砂は、春先に発達する強い南風にのって、はるばる地中海を越え、フランスやイタリア、スイスといった地域にまで運ばれます。高度3,000メートル以上の上空に達することもあり、そこで雲に取り込まれ、やがて雪の“核”になるのです。

 

年間100万トン以上が飛来

この空を渡る砂の量は想像以上。なんと年間100万トン以上のサハラ砂がヨーロッパ方面に到達しているとされます。大気の流れ次第では、北欧やドイツまで届くこともあるんですよ。つまり、赤い雪は「サハラとヨーロッパが空でつながっている証」でもあるんですね。

 

このように、ヨーロッパに降る赤い雪の正体は、はるか遠くサハラ砂漠からやってきた自然の赤土。ちょっぴり不気味に見えるかもしれませんが、そこにあるのは地球規模の気流が織りなす雄大なつながり──まさに「空のかけ橋」なんですね。