個人主義というのは「個」の価値を尊重する考え方のことで、現代においては当たり前のことのように思えますが、それが主流の考えになったのはわりと最近のことです。
第二次世界大戦前は個人主義を否定する全体主義の一形態として国家主義がさかんでした。そして国民国家が成立したのも19世紀以降とわりと最近なので、国家主義というのも案外歴史が浅いものです。
国家というものが成立する以前はどうだったのかというと、国家を至上とするのではなく、神(ローマ・カトリック教会)を至上とする全体主義が主流でした。中世においては国家ではなく宗教が人を支配していたのです。
11世紀、カトリック教会はヨーロッパ中のキリスト教徒をかき集め、第一回十字軍遠征を組織し、聖地エルサレムの奪還に成功します。そして遠征の際の東方への交易路開拓で、ヨーロッパの商業は大きな繁栄を得ました。
しかしそれで教会が絶大な権威を得たばかりに、信仰をもたない者は異端として迫害の対象にされるのです。繁栄の影には「魔女狩り」はじめ大勢の犠牲がありました。
火刑に処される「魔女」を描いた14世紀の絵
そんな状況に嫌気が指した当時の人々により、神中心の世界観を否定し、人間性を尊重(ヒューマニズム)する文芸復興運動「ルネサンス」が起こされたのです。
このヒューマニズムというのは個人主義と極めて近い考え方で、ルネサンス期を通して拡散され、のちにカトリックの全体主義的権威を破壊する宗教改革の原動力となります。
そして宗教改革の進展から、主権国家体制の確立、啓蒙思想の拡大へと連動し、フランス革命で人権や平等といった価値観が根付いた結果、現代的な個人主義の基礎が確立された・・・という流れがあるのです。
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