アイルランドの憲法の特徴|憲法改正史も

アイルランドの国旗

 

アイルランドの国土

 

アイルランド共和国の憲法は「アイルランド憲法」で、1937年7月1日に採択、同年12月29日に施行されたもの。離婚や同性婚、妊娠中絶の容認など、時代による価値観のアップデートに合わせて現在にいたるまで何度も改正も行われています。今回はアイルランド憲法の成立経緯や改正の歴史について解説していきます。

 

 

 

アイルランド憲法の歴史

中世以降ずっとイギリスの支配を受けてきたアイルランドですが、1922年12月6日にアイルランド自由国としてイギリスから自治独立を勝ち取った時にアイルランド自由国憲法を制定しています。しかしながら、アイルランド自由国はあくまでイギリス連邦傘下の自治国だったので、その内容はイギリス政府から押し付けられたようなものでした。

 

一方で議会の採決で憲法改正を行なうことができるとも規定されていたため、1937年7月1日に総選挙と同時に国民投票が実施され、賛成多数で改正が承認。より独立性の高いアイルランド憲法が制定されると同時に、国名をエールからアイルランド(アイルランド共和国)に改称しました。

 

アイルランド憲法の改正

アイルランド憲法は、前文と16項目の見出しによる50ヶ条の条文で構成されています。憲法改正するにあたってはかならず国民投票を実施しなければならない(第46条)とされており、これまで何度も改正が行われています。以下の改正は国民投票による、住民の意思が反映された結果で、憲法改正に合わせて法律の改正、施行、撤廃も行なわれています。

 

アイルランドの憲法改正史

 
  • 1973年: 特定の宗教/宗派の特別な地位に関する規定(第44条第1の2項、第1の3項)の削除。
  • 1983年: 母体と胎児に同等の権利を認め(第40条3項3号)、妊娠中絶が非合法化される(憲法修正第8条)。
  • 1986年:離婚の禁止(第41条第3項)に関して、国民投票を行うが、反対票が多数で改正されず。
  • 1995年: 離婚の禁止(第41条第3項)が削除され、1996年離婚が法的に認められるようになる。
  • 1998年: 第19条の改正により、北アイルランド6県の領有権主張を放棄することを決定。
  • 2001年: ウラクタス(アイルランド議会)は死刑執行を許す法律を施行してはならない(第15条)と定める。
  • 2015年: 家族保護条項(第41条)の改正と2015年婚姻法の制定により同性婚が法認される(憲法修正第34条)。
  • 2018年:1983年の憲法修正第8条の撤廃、妊娠中絶が合法化される。
  • 2018年: 神への冒涜を禁じた憲法の規定の撤廃。
  • 2019年: 離婚条件の緩和(今後、法的に規定される)。