北欧神話とケルト神話の違いとは?

北欧神話の海神エーギル(左)とケルト神話の海神スィール(右)

 

北欧神話とケルト神話は、どちらも北欧が中心という印象が強いですが、実はまったく違うもの。ここでは両者の違いについて簡単に解説していきます。

 

 

ケルト神話とは

 

ケルト神話は、アイルランド、ウェールズ、スコットランドなどの地域に伝わる豊かな神話群です。自然界と深い関連があり、多様な神々や英雄が登場します。代表的な物語には「ク・フーリンの生涯」や「ウルスターの誓約」があり、魔法や異世界への旅が特徴です。詩的で物語性が強く、口承伝承が多くを占めています。

 

北欧神話とは

 

北欧神話は、スカンディナビア半島やアイスランドの文化に根ざす神話体系で、オーディン、トール、フレイヤなどの神々が登場します。運命と戦いが主要なテーマであり、特にラグナロク(世界の終末と再生の物語)が知られています。これらの物語は「エッダ」としてまとめられ、神々の英雄的な冒険が描かれています。

 

北欧神話とケルト神話の違い

北欧神話とケルト神話の違いは、細かく見ると様々ですが、大きな部分では

 

  • 地理的・文化的背景
  • 主要な神々と信仰
  • 神話のテーマと物語
  • 文学的・史料的伝承

 

などが挙げられます。それぞれの違いについて以下で具体的に掘り下げていきます。

 

地理的・文化的背景

ケルト神話

ケルト神話は、主にアイルランド、スコットランド、ウェールズ、ブリタニーなど、ケルト人が居住していた地域に関連しています。この神話は多様な地域からの影響を受けており、地域ごとに異なるバリエーションが存在します。

 

北欧神話

北欧神話は、スカンディナビア半島(現在のノルウェー、スウェーデン、デンマーク)やアイスランドなど、ヴァイキングと関連深い地域で発展しました。この神話体系は「エッダ」などの古文書によってよく知られています。

 

主要な神々と信仰

ケルト神話

ケルトの神々は自然界と深く結びついており、多くの場合、地域の地形や特徴(川、山など)と関連づけられます。例えば、ダグダ(豊穣と戦の神)、ブリジッド(詩、医術、鍛冶の女神)、クー・フーリン(英雄的半神)などがいます。

 

北欧神話

北欧の神々はしばしば戦いと詩に関連付けられます。主要な神々にはオーディン(知恵と戦争の神)、トール(雷と戦争の神)、フレイヤ(愛と美の女神)などが含まれます。

 

神話のテーマと物語

ケルト神話

物語性が強く、詩的な表現が多用されます。英雄譚や自然との調和、復讐、愛などのテーマが織り交ぜられています。物語はしばしば魔法や異世界への旅を特徴としています。

 

北欧神話

運命や破壊、再生のサイクルが一貫したテーマとして扱われます。ラグナロク(神々の最後の戦いと世界の終焉)は北欧神話の中核的な部分を形成します。

 

文学的・史料的伝承

ケルト神話

古代の口承伝統に基づいており、中世の文書によって記録されました。多くの物語が散文や詩の形式で書かれています。

 

北欧神話

主に「詩のエッダ」と「散文のエッダ」を通じて知られており、13世紀のアイスランドの歴史家スノッリ・ストゥルルソンによって編纂されました。

 

神話の保全状況にも大きな違いがあり、北欧神話が、詩人スノッリ・ストゥルルソンによる『エッダ』や、歴史家サクソ・グラマティクスによる『デンマーク人の事績』などに詳細に記されているのに対して、ケルト神話は、ローマ帝国による支配と、その後のキリスト教化により消失し、分からない部分がほとんどなのが実情です。

 

北欧神話とケルト神話が混同されやすい理由

北欧神話とケルト神話が混同されやすいのは、ゲルマン民族とケルト民族の文化や風習が似ているためです。とりわけ日本では、ゲームやライトノベルなどでケルト人のドルイドを連想させるキャラクターが、ルーン文字を用いて魔術などを操る描写が多く見られるため、この混同が進んだと言われています。

 

ドルイドは文字の使用を嫌った

ケルトにおけるドルイドは、指導的立場にある役職ですが、彼らは秘密の保持のため、文字の使用を極端に嫌ったと言われています。またルーン文字についても、北欧神話でオーディンが手に入れたものであるため、ケルト神話には登場しないとされています。

 

北欧神話とケルト神話、どちらもゲルマン社会から生まれた心躍る物語ですが、色々と違いがあるんですね。北欧神話はスカンディナビアとアイスランドが舞台で、神々が英雄とともに運命と戦います。特に「ラグナロク」という物語は、世界の終わりと再生を描いています。それに対して、ケルト神話はアイルランドやウェールズの豊かな自然と結びついた物語が多く、詩や伝説を通じて英雄の冒険が語られるんです。ケルト神話は「自然との一体感」が感じられる一方、北欧神話は「運命との闘い」が中心にあるんですね。