
アイスランドの”大地の裂け目”シンクヴェトリル
出典:D LによるPixabayからの画像
アイスランドという国には、他ではちょっと見られない風景があります。それが「地球の裂け目」と呼ばれる壮大な地形。実際にこの場所に立つと、大地が割れているような圧倒的なスケールに圧倒されてしまうはずです。でもこの裂け目、ただの自然の偶然じゃなくて、地球の“動き”と深く関係があるんです。
この記事では、その「地球の裂け目」が何なのか、どこで見られるのか、そしてそれが人々の暮らしにどんな影響を与えているのかを、じっくり見ていきます。
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まずはこの不思議な言葉の正体から見ていきましょう。じつはアイスランドの裂け目、プレートと呼ばれる地球の“外殻”の境目にできた本物の「割れ目」なんです。
アイスランドはユーラシアプレートと北アメリカプレートのちょうど境目に位置していて、両プレートが反対方向にゆっくりと離れている「発散型境界」にあります。この引っ張る力によって大地が割れ、裂け目のような谷ができるんです。
アイスランドを横断する中大西洋海嶺
アイスランドを隔てるように、ユーラシアプレートと北アメリカプレートが広がる中大西洋海嶺を示す地図
出典:USGS / CC0 1.0より
それだけでなく、アイスランドの地下にはホットスポットと呼ばれるマントルの上昇流があって、地殻を下から押し上げているんですね。このふたつの力が合わさることで、裂け目だけでなく火山や温泉といった独特の地形がたくさん生まれているというわけです。
「地球の裂け目」が実際に見られる代表的な場所、それがシンクヴェトリル国立公園。ただの絶景スポットじゃなくて、歴史的にも重要な意味を持つ場所です。
公園の中でもとくに有名なのがアルマンナギャウ。ここでは、岩の壁がずらっと並ぶ谷のような地形が広がっていて、実際にプレートの境界を歩くことができます。地球が「割れてる」という感覚を、身をもって体感できる場所なんです。
アルマンナギャウ峡谷(シンクヴェトリル国立公園)
ユーラシアプレートと北アメリカプレートが引き裂き合う力によって生まれたアルマンナギャウ峡谷を観光客が歩いている
出典:Olga Ernst / Creative Commons Attribution‑Share Alike 4.0 Internationalより
さらに驚くのが、ここが930年に世界最古級の議会「アルシング(Althing)」の開催地でもあること。自然の裂け目の上で政治が行われていたという、なんとも不思議で象徴的な場所なのです。
アルシングの会議風景(19世紀末に制作された水彩画)
古代アルシングにおけるLögrétta(法律評議会)がLögberg(法の岩)付近で開かれていた11世紀頃の様子を、ロマン主義的な視点で描いている。
出典:W. G. Collingwood / The Trustees of the British Museum / Public Domain
こんなダイナミックな自然と共存しながら、アイスランドの人々はどのように暮らしてきたのでしょうか?
裂け目の下からわき出るマグマの熱は、地熱エネルギーとして活用されています。発電や暖房、温水供給まで、アイスランドのエネルギーの多くは自然の力からまかなわれていて、環境にも優しい暮らしが実現しているんですね。
アイスランド・ヘトリスヘイジ地熱発電所
アイスランド南西部、ヘングイル火山帯に位置するヘトリスヘイジ地熱発電所の蒸気塔やパイプライン。地中深くから抽出した熱エネルギーを電力と温水に変換する、再生可能エネルギー施設。
出典:Mathieu Neville / Creative Commons Attribution 4.0 International
この裂け目は、観光客にとっても魅力的なスポットです。さらに、地球科学の実地教材として教育面でも価値が高く、訪れる人に「地球って生きてるんだ」と感じさせる力を持っています。つまり、自然と共に“学びながら生きる”場所でもあるのです。
アイスランドの「地球の裂け目」は、単なる珍しい風景ではなく、プレートの動きと火山活動が生み出す“生きた地球”の証。その上で暮らし、知恵と工夫で共存している人々の姿から、自然とのつながりの大切さが見えてくるのです。
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