ヨーロッパの民族

ヨーロッパの民族史

民族とは歴史の産物である。ある一団の人々が、周囲の人々との対比において、連帯感や集団としてのアイデンティティーを持つようになったとき、民族は生まれると言うべきであろう。

 

M・ジンマーマン/M=C・ジンマーマン著『カタルーニャの歴史と文化』より

 

民族(英:Ethnicity)とは、同じ文化や歴史を共有する「われわれ」という仲間意識で結ばれた集団のことです。「文化」というのは言語や宗教、生活習慣、伝統など色々な要素を含んでいるがゆえに、民族とは非常に曖昧な概念で、何か普遍的・客観的基準があるわけではありません。

 

ただし、ある民族の特徴は用いる言語(母語)に最もよく現れるので、「インド・ヨーロッパ語族」など、言語族がそのまま民族区分の指標になることも多く、ヨーロッパ人の祖先であるゲルマン民族とかラテン民族とかも言語を基準にした民族区分です。一方で農耕民族とか遊牧民族は生活様式を基準にした、非常にざっくりとした区分もあれば、「ユダヤ民族」のように宗教を指標にする民族もあり、必ずしも言語を共有しているとも限らないのです。

 

ヨーロッパ人の民族観

古代ギリシア人は自分たちの言語が通じない民族に対し「バルバロイ」という蔑視を含んだ呼称を使っていました。また大航海時代以降のヨーロッパ人にとって、自分たちの文明圏(キリスト教圏)以外の民族は「未開民族」であり、「われわれ」と「それ以外」程度の認識しかもっていませんでした。

 

しかしそういった蔑みの感覚(必ずしも悪意があるとは限らない)が、現地住民の意志を無視した植民地主義に繋がり、植民地獲得競争の加熱が、ヨーロッパどころか全世界を巻き込む世界大戦を引き起こしたことから、現代以降ようやくそういった考え方は間違ったものとみなされるようになったのです。