ヨーロッパに世界遺産が多い理由

フランスの世界遺産『モン・サン=ミシェル』

 

世界遺産の登録数は世界で1000件を超えていますが、特に登録数が多いのがヨーロッパです。

 

国別世界遺産登録数ランキングでイタリアスペインドイツフランスイギリスロシアの欧州六カ国がトップ10にランクインしています。ここまでヨーロッパに世界遺産が集中する理由として主に3つ挙げられます。

 

 

1.条約への批准が早かった

まず1972年に「世界遺産条約」が採択された時、その加盟国がヨーロッパ諸国に集中し、我先にと申請を行なっていたというのがあります。出だしの時点で差をつけられたというのも、理由の一つとしてあげられるのです。

 

2.素材の真性が高い

建造物の世界遺産登録の為には、建築当初の材料のままであること、つまり「素材の真性」が重要になってきます。

 

ヨーロッパの建築物のほとんどは劣化が起きにくい石造りなので、「素材の真性」が保たれやすいのです。そのため、ヨーロッパ文明発祥の地であるイタリア、ギリシャなどは、都市のどこを掘っても歴史的建造物が出てくるくらい。

 

ヨーロッパには築何百年という家が珍しくなく、街ごと世界遺産に登録されたり、個人の家が国に保護指定されていることも珍しくないのです。素材の真性というのは世界遺産登録における重要な基準なのです。

 

逆に日本は素材の真性が低い=経年劣化が起きやすい木造建築が大半。いくら古い家であっても、過去から現在に至るまで定期的に木材が交換されており、素材の真性が保たれている建造物はほとんどありません。

 

そして腐食で跡形もなくなった建造物ばかりなので、日本に建造物の世界遺産は少ないのです。ただし、近年はあまりにヨーロッパに偏りが生まれたことから、木造建造物の登録も認められるようになり、少しずつ格差は是正されつつあります。

 

3.災害が少ない

ヨーロッパは地震や津波といった自然災害が少ないので、戦争でも起きない限りは建造物が保たれやすいというのも大きいです。とはいえヨーロッパは古来より、戦争が特に多い地域だったので、それによって失われた伝統的建造物も多くあります。

 

 

 

ヨーロッパには、確かに歴史的な建造物や文化的な遺産が豊富に存在します。その一方で、ヨーロッパの歴史は数多くの戦争と紛争に彩られており、多くの伝統的建造物がその犠牲となってきました。しかし、これらの建造物の多くが失われたにもかかわらず、残されたものは、その歴史的価値や美しさ、そして文化的重要性を世界に認められ、世界遺産として保護されています。

 

ヨーロッパの国々はまた、文化遺産の保存と保護に関して非常に意識が高く、国際協力を含む多くの取り組みを行っています。これは、これらの遺産が単に一国のものではなく、世界共通の価値を持つという認識から来ています。ヨーロッパの各国政府、地方自治体、さらには一般市民までが、これらの遺産の維持と保存に尽力しているのです。

 

さらに、ヨーロッパの世界遺産には、自然遺産や文化的景観も含まれており、これらは地域の自然環境や歴史的背景を反映しています。これらの遺産は、地域のアイデンティティを形成し、観光業の重要な一翼を担っています。したがって、これらの遺産を守ることは、経済的にも、文化的にも重要な意味を持つのです。

 

最後に、世界遺産としての登録は、その地域の認知度を高め、国際的な観光客を惹きつける効果があります。これは、文化交流を促進し、地域経済に大きな恩恵をもたらすことにつながっています。したがって、ヨーロッパ諸国は、世界遺産の保存と促進に積極的に取り組んでいるのです。